《糸島新聞連載コラム まち角》

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 球磨川が氾濫し、甚大な被害が出た熊本豪雨(2020年)の被災地で、泥水につかった着物を、井戸水で手洗いするトルコ出身の男性の姿があった。浸水した旅館のたんすに収められていた多くの着物。「思い出が詰まっている。どうにか、復活させたい」。だが、何度洗っても泥がにじみだす。被災者に寄り添う男性の目から涙があふれた▼男性は西区今宿東在住でトルコの伝統的織物を輸入販売しているエンシジ・ムラ―トさん。2011年の東日本大震災以来、日本各地の被災地に救援物資を届け、復興に向けた支援を続けてきた。トルコ・シリア大地震では、ムラ―トさんに励まされてきた被災地から、毛布や寝袋などの物資が「恩返し」としてムラ―トさんのもとに寄せられ、現地に送られた▼トルコと日本は130年以上前から深い絆で結ばれている。原点が1890年に和歌山県沖で暴風雨に遭い遭難したトルコ軍艦エルトゥールル号の乗組員の救難。住民が69人を救助し、貧しい暮らしながら、乗組員のために食料や衣服を出し合った▼この1世紀後、両国のゆるぎない友好関係の証しとなる出来事があった。1985年のイラン・イラク戦争時、200人以上の日本人がテヘランに取り残された。イラクによる航空機への無差別攻撃のタイムリミットが迫っていた。だが、日本から救援機は飛ばなかった。絶望的な状況下、日本人救出のため、命懸けで救援機を向かわせたのがトルコだった▼ムラ―トさんは、今回の大地震の被災地で耐震性のある安全な学校建設をするため、救援金を募っている。ぜひ、被災地を救う力になってほしい。問い合わせはムラ―トさん=090(9496)8699。

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