春夏野菜/生育温度、発芽適温が重要

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【ドクター古藤の園芸塾】 14

 前回はニンジンやバレイショなど根物野菜栽培スケジュールについてご紹介いたしました。あと1カ月もすると一部の園芸店では、トマトやキュウリなどの春夏野菜の苗が並びはじめます。苗を見てしまうと、ついつい「よしよし、はよう植えて、はよう食べちゃろう」という皆さんの気持ちは分かるのですが、まずはここで一呼吸。
 春夏野菜で特に重要なのが生育温度と発芽適温。年々温暖化傾向とは思いますが、やはり植物は季節を感じ、温度や日長時間などが生育に大きく左右します。発芽や生育に至っては、その野菜の生まれ故郷である原産地がどこなのかが、生育の鍵を握っています。

生育表


 面白いのが夏野菜で人気高いトマトとナス。まずトマト。原産地は南米アンデス地方。アンデス地方を地図で見ると、赤道に比較的近く、日差しが強く、何か暑そうな場所です。しかし、トマトの発芽適温は20~30℃。生育適温は、もっと幅が縮まり21~26℃。どちらかというと高温を嫌うタイプです。そこで気づくのが、アンデス地方の気候の特徴です。
 アンデス地方は、日差しは強いのですが、標高が高く、土壌養分も少なく、雨も少ない乾燥地帯。なるほど、トマトの生育特性は、涼しく、水分を嫌い、栄養があまりいらない。そして、強い日差しを好むことから、アンデス地方が原産地であるとうなずけます。逆にいうと、トマトをおいしく育てるためには、水分や肥料をあまり与えない、涼しくしてあげる、強い日差しが必要となります。


 では、ナスとなると、原産地がインドのガンジス川流域。地図で見ると、赤道近くで、日差しが強く、土壌水分が多く、肥沃(ひよく)でムシムシした湿気が多い高温多湿場所となります。ナスの生育特性は、水分と多くの栄養を好み、気温、湿度ともに高く、強い日差しを好むことから、インド原産は納得できます。
 そこで、ナスをたくさん収穫するには、5月に入り気温が暖かくなってから苗を植える。肥料と水を好むため肥料は多めに与え、定期的に液体肥料を与えること。トマトとナスは同じナス科に属する野菜ですが、生育特性は正反対ですね。
 また、同じナス科のピーマンも熱帯南米原産なので、低温に非常に弱く、ナス同様、5月連休頃の苗定植をお薦めします。キュウリやカボチャのウリ科野菜は、比較的低温でも生育するので、4月定植でも構いませんが、ニガウリは熱帯アジア原産なので、5月苗定植をお薦めします。
 さらにオクラもアフリカ北東部原産なので、気温が低いと、発芽しない。「苗を植えてたら、ぜ~んぶ消えてしもうた」などとなりかねません。


 3月中下旬から苗が出回っても、すぐ飛びつくことなく、別表と気温を気にしながら、栽培計画を計画してみてください。全ての植物は正直な生き物です。


(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)糸島新聞・2023年2月24日

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この記事を書いた人

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