連載200回「東京猫又 糸島放浪記」これからも見守って/にしむらるいさんインタビュー

 「毎週欠かさず連載して、困ったことはないですね。うん、大丈夫」。やんわりとした口調で、にしむらるいさんは話す。気負いを感じない、るいさん独自の空気感だ。

 2019年1月1日号から始まった「東京猫又 糸島放浪記」が、3月10日号で連載200回を迎える。4年以上に及ぶ連載だが、時が経つのはあっという間だったとるいさんはいう。

 子どもの時から妖怪、猫が好き。グラフィックデザインの専門学校に通う頃から、コミカルな劇画を描いた江戸時代の浮世絵師、歌川国芳の世界に魅かれ、全てをひっくるめて生まれたキャラクターが、手ぬぐいかぶりでしっぽが2本の猫又(=猫の妖怪)「とらきち」。江戸時代に生まれて以来、死なずに現代の東京に生きる「東京猫又」を2012年から描き始めた。翌年からは、集英社グループ・ホーム社のウェブサイト上(ねこねこ横丁)で365日×5年間、日替わりイラストを更新してきた。

 16年に家族で糸島へ移住。糸島新聞の依頼を受け、「東京猫又 糸島放浪記」の連載が始まった。東京から糸島に来た猫又のとらきちがあちらこちらを放浪し、ほのぼのとした笑いを誘う。

「東京猫又」の誕生の瞬間。
江戸時代の猫「とらきち」が命を終えたところに現われた神様の力で2本目のしっぽが生え、猫又として生き返った。
猫との区別がつくようにと授けられたのが手ぬぐい。「東京猫又」の誕生の瞬間。

 題材は、地元の季節感あふれる行事などに合わせて選ぶ。「初めに決めるのは、オチ。その後、一コマずつのセリフを考えて、スマホにテキストで書き入れていきます」。iPadを使って絵を描き、約2時間で完成。「子どもを夜寝かしつけた後に描いたりしますね。自分も一緒に寝ちゃうこともあるけど」と笑う。

 連載中に、第2子となる長男を出産。予定日の1カ月前は掲載作品をまとめて出し、その後も全く連載を切らさなかった芯の強さも持つ。

 好きなのは、セリフが短くシンプルで、シュールなもの。一方で、誰かを傷つけたり、差別したりしていないか気にかける。「例えばサザエさんとか、誰も傷つかない、わだかまりがない、平和に終わるのがいいですよね。猫ばかりだと犬好きの人に悪いので、たまに登場させたりします」とも。

 今は、糸島市内にある飲食店のロゴ作りや、化粧品などのパッケージデザインも手がける。昨年からは、オルタナティブスクール(公教育とは別の、もう一つの学校)「おとなとこどもの学校tetocoto(テトコト)」のスタッフを務めるなど、糸島中で活躍の場を広げている。

 東京猫又の糸島放浪はこれからも続く。読者へのメッセージをお願いすると、るいさんはふふっと笑い「これからもゆるく見守ってほしいです」

iPadで漫画を描くにしむらるいさん
iPadで漫画を描くにしむらるいさん。専用ペンで線の強弱が自由に付けられ、
電源さえあればどこでも使えると愛用している。
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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