ドクター古藤の園芸塾Vol.64【3/15号掲載】

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環境一変させる外来の雑草

 皆さん、「メリケントキンソウ」ってご存知ですか?知人に尋ねると「なんな、メリケン粉のことな」「いやいや、ひちこい雑草の名前ですたい」。近年、糸島でも外来生物として公園やグラウンド、道端で繁殖し、ひとたび大繁殖してしまうと、根絶することは大変困難な植物です。そこで、今回、環境問題となっている外来雑草についてご紹介いたします。

 そもそも国内雑草である在来種は、私たちの暮らしと密接に関係していました。特に「春の七草」は、食べ過ぎて弱った私たちの胃腸を整えてくれる植物として有名ですよね。

 一方、雑草というと、目障りなもの、邪魔なものといったふうに悪いイメージばかりが頭をよぎり、農家にとってみれば、憎いやつ以外何者でもないようですが、逆に「雑草魂」などと言われるように、よい意味でしぶといといった表現として使われます。近年その雑草の生息に異変が起こっています。

 前述の「メリケントキンソウ」。南アメリカ原産の一年草(発芽後一年間で種子をつけ、その後枯れてしまう植物)で、1930年代に和歌山県で初めて移入が確認されました。5~6月に硬いトゲを持った種子をつけることが知られており、この種子が靴底などに刺さることで人為的に運ばれ、生息地が拡大していきます。特に公園や芝生など日当たりのよい場所を好んで生息します。特定外来生物には指定されていませんが、硬いトゲを持った種子をつけるため、公園等の利用者がけがをすることが懸念されています。

硬いトゲを持ったメリケントキンソウの種子

 次にもっと厄介なのが「オオキンケイギク」。北アメリカ原産の多年草で、1880年代に鑑賞目的で日本に導入されました。5月~7月に鮮やかな黄色の花を咲かせます。強靭(きょうじん)でよく生育することなどから、かつては法面の緑化に使用されたり、ポット苗が販売されたりしていました。しかし、繁殖力があまりに強く、一度定着すると在来の野草を駆逐し、周囲の環境を一変させてしまいます。そのため、2006年に外来生物法に基づく「特定外来生物」に指定され、栽培・保管・運搬・譲渡・野外に放つことなどが原則として禁止されました。

鮮やかな色のオオキンケイギクは特定外来生物

 耕作放棄や河川敷を見わたすと、北アメリカ原産のセイタカアワダチソウやアレチウリなどが、異常に繁殖しています。

 私も田んぼの草刈りをしますが、在来のチガヤやノビルなどを刈ると、再生も弱くおとなしくしてくれています。一方、マルバツユクサなどの外来種になると、刈っても刈っても、すぐ伸び、一面マルバツユクサだらけになります。

 温暖化が進み、身の回りの植物の生態系が大きく変わってきていると、草刈りを繰り返しながら感じます。ため池に目をやると、見たこともないような水生植物が繁殖をしており、池の中の生き物はどうなっているんだろうと気になります。

 今後もっと、温暖化が進行すると、外来性雑草だけでなく、植物に重大な危害を与える対応困難な害虫や病気などが増えたり、水生動植物も在来種が激減し、外来種が増殖したりしていくんだろうと思います。

冬には周りの雑草は枯れているが、メリケントキンソウの葉は青々している

 地球規模で進む温暖化現象。私たちにどのような対策法があるのか。大変難しい問題ではありますが、身近で何が起こっているのか、それだけでもいいので、各自危機感をもつことが重要ではないでしょうか。

(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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