ナス栽培の「押さえどころ」
大型連休も過ぎ、気温が上昇するこの時期、定植した小さな野菜苗も見るごとに生長が楽しみになってきます。そこで、よく相談を受けるのが「ナスば植えたとばってん、いっちょん太らん」「どこの枝ば、どー伸ばすとかいな」「追肥っていつやるとですな」など、ナスに関しては相談の多いこと。確かに同じナス科のトマトやピーマンと比べ、育て方にはちょっと工夫がいるようです。大切な四つのポイントを押さえてみましょう。
▼家庭菜園での仕立て方の基本は「3本整枝法」。主枝を伸ばし、一番花のすぐ下と、その下にある枝(側枝)を勢いよく伸ばします。その下方の葉の付け根からでるわき芽は、取り除き、すっきりさせてください。(イラスト①参照)
▼側枝の剪定法
3本整枝法で伸びた側枝の剪定(せんてい)には2通りあります。直売所出荷者の方などでしたら「品質重視の剪定」となりますが、家庭菜園では「収量重視剪定」がお薦めです。側枝をある程度放任し、花数を増やし、収量を確保します。
ただし、貧弱な枝を間引きすることは行なってください。梅雨明けには過繁茂になり、収量も品質も低下するので、思い切って強剪定を行い、樹をすっきりさせることで、秋の収穫が楽しみになります。
▼追肥と潅水
たくさんの肥料と水を好むナスの本質から、追肥と潅水は重要です。追肥は一番果の収穫時に「アグリトップドレッシング野菜追肥専用肥料」を80グラム/坪目安で与え、その後は概ね10日間隔を目安に与えてください。また、合間に「有機液肥エコアース液肥」300倍希釈液を5日おきに与えることで、実付きがよくなります。梅雨明けの高温乾燥は生育のダメージとなります。乾燥したときは、夕方、うね間にタップリ水を与え、株元は敷きワラなどで蒸散防止に努めてください。
▼簡単生育診断
順調に育っているか、栄養不足傾向か、不足かの判断は、花を見ることで簡単に判断できます。大きい花で雄しべより柱頭が長いのは生育が正常です。小さい花で続けて花つき、柱頭が並んでいるのは、栄養不足に傾いています。枝の先端に小さい花が少しつき、柱頭が埋もれていたら、完全に栄養不足です。速効性の肥料と液体肥料、カルシウム肥料をこまめに与え生育の回復を図ることが重要です。(イラスト②参照)
「親の意見と茄子の花は千に一つも仇(あだ)はない」のことわざにあるように、ナスの花は徒花(あだばな)がなく、咲けば必ずと言っていいほど実をつけます。親の意見は無駄がないから、きちんと耳を傾けることが大切だと説いたものです。栄養を切らさず管理することが、たくさん収穫できるナスの押さえどころと言えるでしょう。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)