コラム まち角

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 黄色い花びらがスクリューのように開き、その姿から日本原産のハイビスカスと呼ばれるのも、うなずける。雷山川下流域に咲き誇るハマボウの花を愛でようと、岸辺に出掛けてみた。無数の花を咲かせて川面の上に枝を伸ばすハマボウは730株。その群落は、まさに「温帯のマングローブ」だ▼ゆっくり観賞しようと思ったが、炎天下で汗だくに。日差しから逃げるように車へと戻り、エアコンの風に当たる始末だった。ハイビスカスの仲間とはいえ、地球温暖化に伴う猛暑に、よく耐えているものだと思い、影響が出ていないか調べてみた▼やはり、国内での北限地が変わっていた。種子が海流に乗り、河口などの砂泥地に漂着し根付くハマボウ。流れ着いた先が生育に合った環境であれば、その分布は広がっていく。日本海側では山口県萩市が北限とされていたが、12年前に島根県の隠岐諸島の海岸でハマボウが見つかり、日本で最も北の生育地となった▼海中でも、海水温の上昇で異変が起きている。多様な生物を育むサンゴ礁が深刻なダメージを受けているのだ。高水温などでストレスを受けたサンゴは白化現象を起こし、栄養がとれなくなり死滅していく。沖縄諸島では近年、大規模な白化が起きている▼「名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子(やし)の実一つ」。島崎藤村作詞の童謡「椰子の実」(1936年発表)。故郷を離れ、どこまでもさまよう愁いをしんみりと感じさせる。だが、今の時代、椰子の実を見つけたら、感傷的になるどころか、漂着した実が芽を出し、根を張るのではないかと想像してしまう。奇抜な発想と感じられないのが恐ろしい。

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