ドクター古藤の園芸塾Vol.33【7/21号掲載】

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太陽熱で土壌を消毒

 23日は農業暦の「大暑」。一年で最も暑い時期。農園芸作業も早朝を利用した、涼しいほんの短い時間しかできませんね。夏の現代病「熱中症」は他人事ではなく、私も一昨年の真夏、草刈り中、熱中症になり、まさか自分がと思いましたが、もう若くないからですかね、無理をすると危険です。十分注意する必要があります。しかし、そんな暑い中、春に種をまいたヒマワリは今が一番の見ごろ。驚きの耐暑性で、灼熱(しゃくねつ)の太陽にも負けず、美しいお花をさんさんと輝かせています。その生命力には驚かされます。


 でも、暑い時期だからこそ、ぜひ、やっておきたいのが「土の消毒」


 「ナスの下葉のでれーっと下がった」。これは、土壌病害の半身萎凋病(いちょうびょう)。「キュウリが突然しおれてきたとです」。これは、ネコブセンチュウ寄生の可能性。植物のあらゆる生育障害や病虫害の原因は、土の疲弊や老化が引き金となり、さまざまな土壌病虫害が繁殖していきます


 特に家庭菜園者や直売所出荷者の菜園で、病虫害に対する土の抵抗力が弱り、作物の生育が悪化するのは以下のような理由が考えられます。限られたスペースで同じ系統の作物を同じ場所で育ててしまう連作障害過剰な施肥▽菜園を休ませることなく、何かしら植えているーなどです。


 そこで、薬剤を使った化学処方ではなく、環境や自然に優しい土作りを紹介します。それが熱射の力で土を消毒する「太陽熱土壌消毒法」です。


 やり方は①野菜くずや根、雑草などを可能な限り除去=イラスト1=②糸島よか堆肥くんを5~7キロ/発酵ぼかし「天神様の地恵」200グラム各坪を入れ、なるべく剣先スコップなどで深めに掘り、土とよく混ぜる=同2=③土壌消毒中に乾かないことと、たくさんの高温水蒸気を発生させるため、たっぷり水を与える=同3=④透明性のあるビニールシートで表面を覆う=同4。

イラスト1
イラスト2
イラスト3
イラスト4


 一番暑いこの時期。最低2週間はそのままにし、長く置いたほうが消毒率は高くなります。覆われた地温は55度以上になり、多くの病害菌や土壌害虫、雑草の種子なども死滅します。


 空きスペースがあれば、小面積でもやってみる価値は大きく、この時期だからこそできる有機的な土作りです。
 秋には石灰と基肥を入れ、ダイコンやカブなど肌が白い野菜を育ててみてください。今までとは、一味も二味も違い美しい姿で収穫ができるでしょう。さらに来年は、その土壌消毒した場所にナスやトマト、ピーマンなどの土壌病害に比較的弱い野菜を育ててみてくだい。特にナスは下葉がしおれる「半身萎凋病」などの被害から守ることができるでしょう。


 よくご質問で、高温で善玉微生物が死滅してしまうんじゃないかと寄せられますが、土に混ぜる糸島よか堆肥は何度も切り替えし、酸素を入れ高温状態にした発酵堆肥です。発酵中の高温によって悪玉菌は死滅し、逆に高温体の微生物は生き続けます。よって、土壌の温度が高温になっても、善玉菌はしっかり活動してくれます。


 猛暑での作業は禁物ですが、暦を意識して暮らしてみると、体のリズムが季節と調和してくれるようです。年に一度の貴重な夏、有機的な土作りをしてみませんか。この後、朝晩の冷え込みが感じられる頃には、秋冬野菜栽培が本格化します。待ち遠しいですね。


(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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