鍔の表裏に異なる象嵌

糸島高収蔵「荒牟田1号古墳」の鉄刀

糸島市の糸島高は7月25日、同高郷土博物館が収蔵する「荒牟田1号墳」(同市志摩小富士)出土の鉄刀の鍔(つば)などに銀と思われる象嵌(ぞうがん)が施されていたことが分かったと発表した。鍔の表と裏で文様が異なり、精緻(せいち)に作られている例は全国的にも珍しく、同高は「中央政権との強い結びつきをもつ人物が埋葬されていた古墳であると考えられる」としている。


 同古墳を含む12基の円墳は「荒牟田古墳群」と名付けられ、古墳時代後期の6世紀後半に造営。1960年、同高歴史部(顧問・大神邦博教諭)が調査を行い、発掘成果の概要を61年の学校誌「糸高文林」9号に掲載した。


 同古墳は、直径15~20メートル。全長9メートルの横穴式石室があり、金銅装の馬具や甲冑(かっちゅう)が出土していることでも知られていたが、古墳群は現存していない。


 今年5月、収蔵品の整理作業の一環として、九州大の協力を得て同古墳の鉄刀をCT(コンピュータ断層撮影)とⅩ線による調査を行ったところ、鉄製の鍔(縦6・9センチ、横6・4センチ、厚さ1・1センチ)に象嵌があることが判明。表(刀身)側はハートの形のような心葉文様で、裏側はアルファベットのCのようなツタ文様が組み合わされていた。また、鍔の側面には波状の文様が、刀身がさやから簡単に抜けないようにする鎺(はばき)には心葉文様があった。

【上】心葉文様の象嵌が施された表(左)と、ツタ文様があった裏(九州大提供の画像に糸島高が着色)
【下】荒牟田1号墳出土の鍔(右)と鎺


 同博物館の学芸員、神野晋作教諭によると、象嵌がある鍔は全国で350例余りあるが、表と裏で文様が異なる例は3例目と希少で、象嵌が精緻に作られていることから「朝鮮半島有事の際の最前線に派遣された武官に中央政権が与えたものか。文様が国内では類例のないことから考えると、朝鮮半島から独自に入手した可能性もある」と推測。


 同高歴史部は5日、九州国立博物館主催の「全国高校歴史学フォーラム」で、今回の発見について発表を行う。

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