【糸島】ドクター古藤の園芸塾Vol.43(10/6号掲載)

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水滴で元気な生育か判断

  「朝はよ~、畑に行ったら、キャベツとかハクサイの葉の先端に水の溜まっとろうがな、周りを見たら夜露はおちとらん」「何のおこっとうとかいな」と私の所へ相談。


 天気の良い早朝、稲やキャベツ、ナスなど葉の先にいっぱい水滴がついていることがあります。いわゆる朝露ですが、これには2種類あることをご存じですか。


 晴天の朝、放射冷却によって葉の表面から熱が奪われて空気より温度が下がると、湿った空気の凝固が始まり、露がつきます。この露の成分は純粋に水ですが、今回の相談はもう一つの露の方です。


 日中、盛んに光合成をする過程で植物は葉から水分を蒸散し、土中の養水分を根から吸い上げています。夜は光合成を停止しますが、元気な根が呼吸のエネルギーで吸った養水分が、根圧でどんどん上の方に押し上げられて葉の先端から飛び出し、水滴となるのです。


 この現象を難しい言葉になりますが、「溢泌(いっぴつ)現象」と呼びます=イラスト1。この溢泌液は植物の下部からの導管を通ってきているため、さまざまな栄養素がイオンの形になって溶け込んでいます。朝露が乾いた後、葉の先端にうっすらと白い跡が残っていたら、それは溢泌液の証です。

イラスト1


 面白いのは、水分をだす「水孔」周辺の細胞には、溢泌液の中からもう一度必要な栄養を植物体内に取り戻す仕組みが存在すること。人間のように、なんでもかんでもゴミにして捨ててしまうようなもったいないことはしないわけです。植物の偉いところです。


 全ての植物に該当するわけではありませんが、体内の過剰水分を排出していると考えられる溢泌現象は、言い換えれば根の元気さと、土の中にバランスよくミネラル類があるという証拠とも言えます。

イチゴの葉の先端にきれいな水滴
キャベツの葉先の溢泌液


 では、健康野菜の元気印と言えるこの現象が起こるような栽培方法は。


 植物の強い細胞をつかさどるカルシウム成分の補給が重要です。そこでお薦めなのが、植物が吸収しやすいよう工夫されたカルシウム専用肥料「畑のカルシウム」、または「ケイ酸カルシウム:ホワイトカリウ」のいずれかを80~100グラム/坪目安に1カ月に1回地表面にばらまく追肥を行うことで効果があります。


 キャベツにハクサイ、ブロッコリー、ダイコン、ホウレンソウ、タマネギなどとカルシウム成分を好む作物は数多くあります。地表面にまかれた、カルシウムをはじめとしたミネラル類が雨などで溶けだし、吸収され、根が丈夫になり、ガチっとしまった生育で病虫害に強く、保存性も向上。さらに、うま味も増します

タマネギへのミネラル投与


 野菜類だけではありません。今から苗や球根が出回るパンジーやビオラ、ナデシコなどの草花苗に加え、チューリップやユリなど球根花の株元にまくことで、きれいな花が一段と輝き、開花期間も長くなります


 私たち人間同様、カルシウムの補給で、骨格を強くすることは免疫力の向上となります。溢泌現象を確認しながら、園芸を楽しむのもちょっとした自信につながりますよ。

(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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