ドクター古藤の園芸塾Vol.46【10/27号掲載】

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タマネギの特性

 タマネギの苗の流通が始まりました。苗を求めるお客さんで、売り場は大にぎわいです。「どうも、タマネギは上手に育てきらん。ネギ坊主ができたり、腐らかしたり、太らんかったり、ひっちゃかめっちゃかやもん(無茶苦茶)」と私の周りでの井戸端会議。

 「なんでできんとですな」との問いに、私も「近頃のタマネギ栽培は、プロの生産者も苦戦しようんしゃぁですもんね」とお答えしたものの、タマネギは、家庭菜園、直売所出荷者など絶大的に人気のある野菜の一つです。そこで、タマネギの栽培ポイント特集を今後不定期掲載となりますが、ご紹介いたします。

 今回は「とう立ち」。とう立ちとは、野菜が花を付ける現象のこと。タマネギの場合、ネギ坊主ができると、種を作る方にエネルギーがとられ、肝心の球の肥大が妨げられるので、なんとしても避けなければなりません。極早生や早生系品種(表参照)は、長日になる前に球が肥大化するためとう立ちの危険性は低いですが、中生や中晩生系は要注意。

 ではなぜとう立ちが起こってしまうのか。

 ①定植後の温度が平年より高く推移してしまったため、生育が進み過ぎ、定植した苗が大苗のネギ状態になってしまった。
 ②生育が良すぎて早めに肥料を吸収。長日になった頃、球が肥大する生育後半に肥料切れが起こってしまった。
 ③極端な乾燥や曇天長雨など根の生育に劣悪な生育環境だった。

 こうした理由が考えられます。ただ、貯蔵性が魅力なのが中生以降の品種。とう立ちを防止するには、立派に育ちすぎた大苗を早く定植しないことに尽きます。具体的には100本束で300~400グラムの苗を、可能な限り時期を遅らせて定植することです。

 次にタマネギは、生育後半にカリウム成分を貪欲に吸収し肥大していきます。よって、長くゆっくり肥料効果が特長の「ケイ酸カリ」を基肥に1坪当たり80~150グラム目安に加えておくと生育エネルギーの消耗が少なくてすみます。

 最後に、苗の活着も生育を大きく左右します。定植前に土が乾燥した状態で基肥を入れ、早めにマルチシートを張られる方がおられます。早めの準備はいいのですが、土が乾燥した状態のままでいると、基肥も溶けにくく、土と馴染んでなく、吸収もできません。理想は、基肥と土を混ぜ合わせた後に一雨当ててからマルチシートを掛けるのがベストです。すると土壌の湿度を保ち、肥料効果が安定します。

 さらに、定植後の生育を促す裏技があります。植え込む前の苗を有機液肥「エコアース」300倍希釈液苗の根部をドブ漬けした後に定植すると、苗の活着が格段と向上します。なお、使用後の液は、花壇や菜園などの草花、野菜に水代わりとしてご利用できます。

有機液肥の希釈液に根をドブ漬け後植えつけると活着が優れる

 近年、タマネギの大産地北海道でも予期せぬ豪雨などの要因で、タマネギの生産量の不安定化が懸念されています。ご自分で食卓の食材を調達するのも大事ではないでしょうか。

(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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