糸島高、実践プログラム公開
糸島高校(荒木礼子校長)が文部科学省の研究指定校として取り組んでいるICT(情報通信技術)を活用した創造的教育方法実践プログラムの公開授業が7日、同高で行われた。プログラムは、生徒自らが主体的に学びに向かい、自己実現のための能力を身につける教育方法の研究開発が目的で、同高では今年2年目の取り組み。県内外の高校や研究指定校、大学などの関係者約80人が授業を見学した後、本年度の事業の中間発表を熱心に聞き入った。
中間発表された事業は、同高と韓国・ソジョン高との間で実施している国際オンライン研究と、衛星データの利活用の二つ。2年生が総合的な探究の時間の授業で取り組んでいる。ソジョン高との研究には、糸島高から14人が参加。テーマごとに9グループに分かれ、自動翻訳アプリを使い、ラインで文章のやりとりをしている。
性的マイノリティーの同性婚を研究テーマにした生徒は、日本と韓国のジェンダー問題の比較や、ジェンダーに関する両国の法律の違い、過去の社会問題に発展した内容の調査をしていることを紹介。別グループの生徒は、日本と韓国の経済成長をテーマとし、国際経済の中で、日本と韓国の強みと弱みを調べたり、急激に成長している中国・インドの経済を分析したりし、日韓経済協力の未来について考察している。
2人は、日韓の生徒の間で、同じテーマを扱っても考え方に違いがあるなどし、ラインのやりとりで理解し合うのは大変だったと指摘。性的マイノリティーの同性婚をテーマにした生徒は、今回の学びをきっかけに「将来は建築学を勉強し、いろんな人が使える多目的トイレをつくりたい」と話した。
また、衛星データの利活用のグループは、衛星データと母親を組み合わせてみるというユニークな発想で、弁当のメニューづくりに役立つ衛星データを活用したIoTキッチンというテーマを設定。海面を観測した衛星のデータをAI(人工知能)で分析して漁獲高の予測をするなどし、旬の入手しやすいさまざまな食材でのメニューづくりを提案する研究を発表した。
また、公開授業は、ICTを活用し、遠隔地の講師と同時双方向型で行う小論文講座など10の授業が公開された。
参加者と糸島高担当者の質疑応答の場も設けられた。プログラムによって、生徒の資質・能力が伸びたことを示す評価方法についての質問が出され、同高は今後の重要な課題にしていく考えを示した。
荒木校長は「すべての授業でICTを使うというのではなく、教え方の引き出しを増やすために取り組んでいる。生徒が必要と自分で決め、ICTを使うようになるのが究極」と話していた。