【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.53(12/15号掲載)

ドクター古藤アイキャッチ

緩効性肥料で追肥の手間減らす

 師走は樹木類の剪定(せんてい)適期。「カツラの太~か枝ば、切りたかばってん、いつ切ってよかとですな」とご相談。「カツラなどの落葉樹の剪定は今がよかですよ」と回答。

 まずはなぜ、そもそも庭木などに剪定が必要なのか。枝葉が茂りすぎると、カイガラムシなどの寄生性害虫やウメノキゴケなどの鮮苔類が木の表面に発生し、樹木の衰えを加速します。そこで適度に枝を切れば、日光がよく当たって風通しもよくなって、木々が元気になります。免疫力も高まり、害虫被害や病気になりづらくなるわけです。

 野菜や草花もそうですが、元気な樹木は、きれいな形をしています。美しい樹形を保つため、伸び過ぎた不要な枝を切り落とす剪定は、この時期には欠かせない作業といえます。

 冬季剪定の代表的な作業が、根から伸びた大きな幹「主幹」から横に生えた腕くらいの太さ(直径10センチ程度)の太枝を付け根から切り落とす「枝おろし」。

 なかなか文章で表現するのは難しいので、専門書を参考にしたイラストを見てください。

 カットは必ず3段階で。まず太枝の生え際から15センチ前後のところに、のこぎりで下から上へ3分の1ほど切り込みを入れたら、少しのこぎりを入れるポイントをずらし、今度は上から下に切って、切り込みから先の部分が落ちるようにします。この段階を経ることで、太枝を切り落とす際に枝の重みで枝元の樹皮が裂けるのを防ぎます。

1剪定の順番
2太枝を主幹から遠いとこから切ると、腐敗する枝が残り、病原菌の侵入口になる
3太枝を主幹ギリギリで切り落とすと表皮が巻き込まず、腐朽菌が浸入しやすくなる

 次に、主幹から太枝の付け根の下部に、少し膨らんだ箇所を見つけます。それに沿い、できるだけ付け根から真っすぐ切り落とします。これが重要です。

 切り口には腐敗を防ぐため、抗菌癒合剤「バッチレート:200グラム:674円(税込)」を塗布。癒合剤が乾いた2~3日後、2回目の上塗りをすると、病原菌が侵入しにくくなります。

 樹木は自己修復機能があり、切り口が自然に樹皮で巻き込まれ、同心円状に傷がふさがれるのが理想=写真1。主幹から切った太枝の根元部を残し過ぎたり、主幹ギリギリで切り落としたりすると、樹皮が巻き込まれず修復機能が働きにくくなります=写真2、3。

写真1
写真2
写真3

 自然界での樹木類は、生存競争が働き、生育が早い方が太く、高く枝葉を張っていきます。一方、遅く育つ方は早く太った樹木の枝葉によって、日が差さなくなり、生育が弱くなっていきます。

 太く高く育った樹木も、これまた時として大風などで折れた枝が朽ちていき、光がさします。自然の力を巧みに利用し、樹木は生き抜いていきます。一方、私たちが育てる庭木類は、人の手を加えないと、弱々しく育ってしまうので、剪定はとても重要な作業と言えるでしょう。ぜひ、樹木を可愛がってください。

(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

目次