ドクター古藤の園芸塾Vol.58【1/26号掲載】

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バレイショ栽培の決め手

 一年の中でも特に一段と寒さを厳しく感じるのが1月下旬から2月中旬。しかし、寒いってばかり言ってはいられませんね。あんなに早く日が暮れていた昨年末から、徐々に夕暮れも遅くなり、春も近まっていると感じられます。そこで、春の野菜作りと言えば、直売所出荷者や家庭菜園出荷者に絶大な人気を誇る「春バレイショ栽培」。

 春バレイショは秋バレイショに比べて品種が多く、皮が赤いものがあったり、種の形が丸型や長円型であったり、肉質がベットリかホクホク感があるかの違いなど、多種多様です。

 その中で、一押しの品種が「キタアカリ」。栗に似た食感と美味さが抜群。品種表を参考にしてください。

 さて、品種を選択した後、上手なバレイショ栽培の決め手五か条といえば一つ目は、種芋を南側室内の窓辺など明るい場所で、種芋を切らず2~3週間程、日光浴させる「浴光育芽」が重要。その理由は▼株の生育がそろい、欠株が少ない▼株当たり茎数が1~2本多くなる▼肥大が早く、早生系の早堀りでは増収する▼中心が割れる空洞の発生が押さえられる▼でん粉価の上昇が早く、完熟が早まる▼植付後の芽の伸長が急速で病害への免疫力が高いーなど、その効果は抜群。

日光浴(浴光育芽)中の種イモ

 二つ目は、栽植密度。粗植では、光や養分を十分得て生育がよくなるため、一個重量が大きくなり、変形芋、中心空洞、でんぷん価の低下などが発生。逆に密植すると、株同士で養水分に競合が生じ、芋数は減少し、多収になっても小粒が増えますし、種芋の使用量が増えます。

 一般的栽培では種芋量は1坪当たり300~500グラム用意し、70~75センチの畦(あぜ)幅と30センチの株間の組み合わせで1坪当たり15~16株を整然と植えることにより収量を確保するのが理想です。

 三つ目は、肥料。バレイショはチッソとカリ成分を与えることで、芋が肥大し収量が増加するため、生育中期から後半にかけての肥大期に不足させないのが大切。リン酸成分は初期生育を促進させ、イモ数を増やす働きをし、デンプンの生成に欠かせない成分です。

 肥料は全量を元肥とし、砂地のように肥料が流乏しやすい畑では、栄養成分が少ない腐植堆肥樹皮(糸島よか堆肥くん)を土に混ぜておくとよいでしょう。

 四つ目は、土寄せ。除草を兼ねた土寄せは、重要な作業です。土壌を柔軟にし、適正な土壌水分の確保、肥料の分解を助け、根の発達を促進する効果があり、生育後半での株の倒伏防止、イモが光に反応し緑化するのを防ぐなど、重要な作業です。

 五つ目は、裏技。カルシウムの補給です。バレイショの生育特性として、土壌がpH5・0の酸性土壌を好むため、土壌pHを上げてしまうカルシウム成分を含んだ石灰類肥料(消石灰やかき殻石灰など)の肥料を土に混ぜない傾向にあります。確かに石灰肥料を入れすぎると、イモの表面にカサカサした病害、そうか病の原因にもなります。

 そこで、土寄せを行うときに、水に溶けやすいカルシウム肥料「畑のカルシウム」を1坪当たり100グラムバレイショの株周りにバラまき、根を傷めないように土とよく混ぜます。

 バレイショはカルシウムが最も必要となるイモの肥大時期に、土寄せと同時にカルシウムを与えることで、高品質となる要素が整います。バレイショは15倍体という収量型野菜です。今年の春、大豊作を目指してバレイショ栽培頑張ってはいかがですか。

がっちりとした濃緑色の強い芽
もやしみたいな芽が生えた弱い芽

(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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