技術の向上と研究
直売所を通して、地域の方々に地元産野菜を利用していただく地産地消の時代。消費者のアンケート調査から見てみると、1位「新鮮であること」2位「地元産であること」3位「おいしい」と「安い」と続き、近年は、「季節感を感じたい」との回答が多いようです。
私も仕事柄、新たな栽培技術や生育を助ける資材の導入などの研究を行なっています。
今回は、同じJAグループのJA福岡市東部管内の和白地区にある、直売所「愛菜市場」の栽培研究会に参加させていただきました。
直売所がある東区和白に近い塩浜地区は、タマネギと白ネギの産地。なんと栽培は明治時代から続いており、福岡県での栽培発祥の地です。畑は、辺り一面砂質土壌。もともと、塩田だったそうで、ミネラルも豊富でタマネギ以外でも、甘みが強いのが特徴です。
さらに東区の作物の歴史のすごさ。三苫地区とお隣の新宮町が県内でのイチゴの発祥地。今では糸島もそうですが、県内各地で代表品種「あまおう」も栽培されています。
奥が深いですね。さらに「箱崎」は大阪の堺、山口の下関に次いで日本三大蔬菜(そさい)産地。ビルなどが立ち並ぶ箱崎は野菜の大産地だったとか。驚きです。
歴史ある東区の産地で特に塩浜地区では、白ネギの栽培が盛んに行なわれており、さらに直売所の消費者の方に喜んでいただける美味しいネギの生産を目指し、施肥技術などの提案を行いました。一部ご紹介いたします。
海辺近くの砂質土壌なので、土壌ミネラルは豊富でうまみは増しますが、栽培については、排水が良過ぎて土壌乾燥が強過ぎる▽肥料が流亡しやすい▽夏季に地温が高温になるなどし、生育が鈍化するーなどの課題があります。さらに近年は夏季から冬まで気温が高く、少雨傾向であり、栽培も難しくなってきているとのこと。
では、どのような対策案があるのか。栽培試験など繰り返さなければ答えはでにくいのですが、取り上げてみます。
▽耐暑性のある品種の検討-近年の高温傾向の気候を考慮し、各種苗メーカーも根を強くし、高温期においても比較的生育ストレスに耐える品種を開発。
▽砂質土壌を徐々に水もち、肥料もちの土壌に改良-優良堆肥、またはゼオライトを積極的に施用。
▽生育助長資材の施用-特殊腐植液体及びアミノ酸液の活用による根の強化。
▽食品添加物由来資材の活用-安全性が高く、鮮度保持能力の強化。
以上のような資材活用を提案いたしました。
即、改善とはいきませんが、まずは試験栽培を含め、取り組んでみることで、何か変化を見い出すことができれば、次への対応が進められます。
今は市街化している福岡市東区和白。食と農の歴史を守ることも地域に密着した直売所ならではの良さとも言えます。
「新鮮」「地元産」「おいしさ」「季節感」に加え、「地域の食と農の歴史」。私が住む糸島も再確認することで、また「がんばるぞ」っと気合が入ります。皆さん、応援してくださいね。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)
※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。