コラム まち角

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 起きたことはすべて最高、起きなかったこともすべて最高ー。さまざまな寓話(ぐうわ)を取り上げ、それを解説して人生の道しるべとする戸田智弘さんの著書「座右の寓話」を読んでいると、こんな言葉に出合った。いろんな経験をこれからしていく新社会人には、ぜひ心に留めてほしい言葉だ▼昔のインドを舞台にした寓話。王様に意見を求められると、いつも冒頭のように答える大臣がいた。ある日、王様が指にけがをしたときも「起きたことは最高の出来事でございます」。腹を立てた王様は大臣を牢屋に入れた。翌日、王様は狩りに出たが、そのとき、人食いの部族に捕まった。神様への捧げものとするため、火あぶりにされることになったが、その直前、王様は解放された。捧げものに、傷があるのは禁物だったのだ。指のけがは「最高の出来事」だった▼戸田さんは、過去に起きたことをどうとらえるべきかが、この寓話の主題だという。悪い出来事が起きても、その事実は変えられない。それなのに「あんなことが起きなかったらよかった」と、くよくよしてばかりいると、悪い過去がそのまま残る▼ならば、つらいことであっても事実を正視し、受け止めてみよう。そうすると、悪い過去が成長のためのきっかけに変わっていく。最悪だった出来事でも、時間が経つと、寓話のように「最高の出来事」になっていくのである▼「ひどく落ち込んだけど、あんなことがあったからこそ、今の幸せな自分につながった」。社会で経験を積んでいくと、恨みに思うことも、後になれば、人生をいい方向に導いてくれた感謝すべきことだったと気づくときがある。困難にぶち当たった時、とても思い浮かんでくる言葉ではないだろうが、少し落ち着いてきたら「ありがとう」と、口にしてみてはどうだろうか。きっと、未来の自分の姿と重なっているだろう。

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