【糸島市】《糸島新聞連載コラム まち角》

まち角アイキャッチ

今週号で紹介している福岡市西区の飯盛神社で催された「鎧着初(よろいきぞ)めの式」。還暦の祝いをする儀式で、これまで何度も取材し、その度に、大将の鎧兜(よろいかぶと)をつけた参加者たちの威厳に満ちた姿に接し、とても感心させられたものだった。そんな自分自身も60歳を過ぎ、大将の姿となって、みなさまからありがたく祝福していただいた▼儀式では、武者役の介添えによって鎧をまとい、兜をかぶった。そして、武者の手で兜の緒がしっかりと締められると、出陣の時に行う三献の儀に移り、杯の酒を三度飲み干した。大将になりきり、生死を共にする武者たちの士気を鼓舞する勇ましい儀式でもある。ただ、儀式の間、大将であるとともに、夫であり父親であることも、しっかりと意識していた▼実は、この場でやりたいことがあった。これまで支えてきてくれた家族に、感謝の気持ちを伝えたかった。儀式では、大将たちが還暦を迎えた心境をつづった文章を用意し、読み上げてもらうのが習わし▼したためておいたのは、妻と一人息子、同席してくれた息子の婚約者に宛てたメッセージ。厳しい競争社会の中で疲れ果てた心をいつも癒やし続けてくれた妻、そして社会人として利他の心をもって働いている息子、そして支えてくれる婚約者。「ありがとう」の言葉を伝えたい一心で書いた文章を、会場で読み上げていただいた。普段の生活では、とても気恥ずかしく口にはできない言葉。それが自然な響きとなって家族に届けられた▼成人式や結婚式、還暦を始めとした年祝い。人生の節目となるさまざまな儀式は、それまでの歩みを振り返り、支えられて生きていることに、素直に感謝を表すいい機会だと思う。古希、喜寿、傘寿、米寿、卒寿、白寿…。これからも「ありがとう」の言葉を何度も何度も繰り返していきたい。

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