【糸島市】【糸島】ドクター古藤の園芸塾Vol.73(5/24号掲載)

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自然からの贈り物

 日本の風土で、すばらしいことの一つに、四季という自然からの贈り物をいただけることが挙げられると思います。

 今の時期、野菜の花や草花の黄色の花に加え、鮮やかな黄金色の植物が目に飛び込んできます。何か元気が湧いてきますね。黄色は、愉快、元気、軽快、希望、無邪気といったイメージを喚起する色と言われています。

 目に飛び込んでくる色鮮やかな植物が麦です。北海道は別格の生産量ですから、別として、糸島を含む福岡県、佐賀県の北部九州は全国有数の麦の産地です。

 ビールや焼酎の原料になる大麦、小麦粉のほか、ラーメン、うどん、パンなどの原料になる小麦。稲を植え付ける前の麦畑は、爽やかな風に揺られ、キラキラしています。

収穫間際の大麦

 ところが、今年の麦は、少し元気がありません。昨年の11月。麦種まきのベストシーズンは、好天が続き、麦生産者も順調に種まきができ、「これは、調子いいぞ」と思っていました。一転して、年明けの2月の天候は、暖冬の中での定期的な降雨によって麦畑が乾かず、生育を助ける大切な麦踏みがあまりできなかったのです。

 通常は、麦踏みを行うことで、麦の茎葉の部分を踏むことで茎を痛めつけ、水分を吸い上げる力が弱まり、内部の水分量が少なくなるため寒さや乾燥に強くなります。また、踏みつけることで茎が増え、養分が行き渡り、根が強くなり、根の成長が促進されるのですが、麦踏みができないと、少し軟弱に育つ傾向になるようです。

 ちなみに、現在、戦禍の最中にあるウクライナには、世界で最も肥沃な土「チェルノーゼム」の大地が分布しています。この大地は 「ヨーロッパのパンかご」とも呼ばれるほどの小麦の大産地であり、世界の食糧庫としての役割を担っています。お米とともに私たちの食料を支えてくれる麦。四季を感じながら、豊作を願うばかりです。

 もう一つ、元気が出る金色の植物をご紹介いたします。過去、新聞やテレビなどでもご紹介いただいた、私が育てています「地湧金蓮(ちゆうきんれん)」。毎年、不思議として見事な黄金色の花を咲かせる珍花です。

地湧金蓮の苞
地湧金蓮の花

 中国南部(雲南省)からインドシナ半島の山地(標高2,000メートル前後)に自生するバナナの仲間です。中国では「地湧金蓮」と書きますが、文字通り蓮に似た鮮やかな黄金色の花が地面から湧き出ているように見えます。茎の頂部で花びらのように四方に開いている部分は苞(ほう)で、直径30センチほどになります。苞の付け根に見えるたくさんの小さな筒状の器官が一つ一つの独立した花です。花は春から秋にかけて次々に咲き、長期間(5~11月)咲き続けてくれます。もし、よければ、一度見にきてください。

 麦や地湧金蓮はじめ、美しい色を届けてくれる植物。山を見れば、まぶしいほどの新緑が鮮やかです。四季のありがたさを感じ取り、感謝したいと思います。皆さんもドライブなどでしっかり季節を感じてみてはいかがですか。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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