アーティスト 大川 博
400年近く前、福岡藩二代目藩主、黒田忠之によって創建された櫻井神社(糸島市志摩)には、幽玄の気韻を感じさせる「杜(もり)」がある。
櫻井神社から櫻井大神宮へと向かう山の斜面の参道を登っていくと、横手に「注連縄(しめなわ)柱」が立っている。この神域の入口の先には、天に向かってまっすぐに伸びる杉の杜が広がる。杉は、神々が天上界から降臨してくる依り代である。悠久の杜のなかで、神々の気韻を描き、四季の巡りを表した。
春霞ただよう杜。満開の桜が咲き誇り、注連縄柱の向こうにあるのは神性を帯びた杉木立。青い空がまぶしい夏。純潔を象徴する白いユリが一輪咲いている。
櫻井の地に雷がとどろくなか、岩戸神窟が口をあけ、ご神霊が顕現される。雨後、光がさし、幽玄の杜には曼珠沙華(まんじゅしゃげ)が花開く。秋が訪れ、夕照が澄んだ空に満ちる。杜に目を凝らすと、秋桜のピンクの花。冬の夜空、三日月が輝き、咲き誇ったやぶ椿の花が「落ち椿」となる。
星空の軌跡のなかで、ラッパ水仙が黄色い花を咲かせる。生命はほんの一瞬だが、健気にして美しく、凛として立つ。そして、神様が依り代として宿られる杜の中で、その命は新たな世代へと受け継がれ、循環していく。
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大阪で育ち、京都で学び、東京で働く。縁あって、糸島の風景を描く。アート(視覚)、オーディオ(聴覚)、アロマ(嗅覚)を融合化し、没入感をより深める作品を、毎年個展で発表。
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