【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.79(7/5号掲載)

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根に酸素補給

 「なんか、おそ~か、梅雨入りやったばってん、ドン曇りで、ぬく~して、じめじめ。やっぱり梅雨はこたえる」「この前、雨の合間に畑にいったら、少~し、土からドブ臭い臭いのしたっちゃんね~。古藤さん、野菜に影響はなかとですな」と、家庭菜園の方からのご相談。

 そこで「野菜苗を植え付ける前、畑になんばいれんしゃったですな」と問うと、「それがですたい。肥料も高くなったけん、家の倉庫にあまっとったとば、いろいろ入れたし、生ごみも入れたですたい。ばってん、少~ししか入れとらんですよ」。

 なるほど、ポイントは二つ。一つ目が余った肥料の内容。お聞きすると、油粕に鶏ふんに、たい肥に化学肥料とこれぞとばかり、いろいろと土に混ぜているようです。極めつけが、台所から出たばかりの含水分の多い生ごみ。

 二つ目が、自己申告の少しの量。少しということですが、よく聞いてみると、余っていた肥料ということで、結構な量の鶏ふんや油粕に加え、生ごみも相当投入されてた模様。少しの量の解釈は人それぞれですから、難しいところです。

 そこで、結論。土の臭気が強い原因は
 ◎過剰投入された有機物類(油粕や鶏ふんプラス生ごみ)の未分解性の残渣(ざんさ)が多い
 ◎梅雨期で過剰な雨量と乾きにくい環境
 ◎土中発酵が、空気(酸素)不足で嫌気性発酵となり、発酵ガスが発生(臭気)

-などの原因が考えられます。

 結果どうなるかというと、土中に発酵ガスの発生によって、根痛みの危険性が心配です。さらに追い打ちをかけるように地上部の茎葉は日照不足で、光合成できず、生育が停滞傾向。栄養素を作り切れずに、根の保護能力も低下。ここは辛抱したとしても、梅雨明けに、一気に強い日差しと高温乾燥の状態に変化することで、根痛みの回復はなかなか厳しいと考えます。

 よって、今の段階でできることは「エアレーション」。やり方は簡単。根の周辺に、直径2センチほどの園芸用イボ竹などの棒を20センチの深さで、ブスっと土に突き刺すのです。トマトやナスなど直根が強い野菜は、株と株の間、畝の方にそれぞれ1ヵ所。キュウリやカボチャ、ピーマンなど浅根作物は、強く根を傷めると再生能力が弱いので、比較的浅く深さ10センチ未満で軽く土に突き刺してください。すると、土中に溜まった発酵ガスの排出に加え、新鮮な空気が供給され、土中の環境も良い方向に変化してくれます。土中で働く有用微生物の動きが良くなり、根の活性化を助けてくれるでしょう。

 もうしばらく続きそうな梅雨。土に新鮮な空気を届け、この時期を耐え抜き、さらに梅雨明けの猛暑にも耐えられる準備をエアレーションでカバーできると思います。私たち人も、まずは足腰がしっかりしていることが健康の秘訣(ひけつ)です。作物の体力が衰えがちなこの時期、しっかり養生してあげましょう。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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