【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.81(7/19号掲載)

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土壌の太陽熱消毒

 猛暑の時期がやってきました。年々気温は上昇し、今や日中温度35℃以上の夏日は当たり前。農作業や屋外建築、道路建設など屋外作業の皆さんは、十分な休憩と栄養、水分補給をして、熱中症対策をしっかり行って対応してください。

 とは言っても、農園芸分野でのこの時期は、土作りにとって重要なシーズンでもあります。それは「太陽熱土壌消毒」。

 気温が最も高くなる夏季の休作期に土壌表面をビニールフィルム等で被覆し、深さ10~20センチ程度の作土層を太陽熱によって50℃以上に上げ、それを長時間持続させて土壌中の病原菌やセンチュウ、土壌昆虫、雑草種子などを死滅させ、密度を低下させる方法です。

 作業方法は、比較的簡単です。重要なのは、作業適期を逃さないことです。地温の上昇には、気温・日射量、土壌水分等が関与します。気温が最も高い時期は7月下旬から8月中旬で土壌中の水分が多い時期は梅雨時です。そのため、梅雨明け間近になったらポリマルチを行ない、1カ月間被覆をします。

 その際、湿度が高い土壌表面に「切りワラ」か「米ヌカ」または「落ち葉」などの有機物をまいて、ビニールフィルムでピッタリ覆うと、より熱消毒の効率が高まります。

 おおむね1カ月と説明しましたが、厳密には消毒完了の目安は、積算温度で算出できます。深さ30センチの地温×日数が800℃以上になれば消毒の終了目安となります。例えば、深さ30センチでの温度が50℃で16日続いた場合、積算温度は50℃×16日=800℃となり、消毒を終了できます。参考にしてみてください。

 ただし、糸状菌(カビの仲間)類、例えば、ホウレンソウが途中から消えていく、立ち枯れ病などには殺菌効果が期待できますが、その他細菌やウイルスには効果がありません。また、ポリ性マルチなどより、少し厚手で伸縮性のあるビニールフィルムの方が、保温効果が高いので、おすすめです。一概には言えませんが、2年に1回の間隔で土壌消毒を行うことにより、土壌病原菌やセンチュウの密度を下げることが可能と思われます。

 特に今から種をまく、コマツナやチンゲンサイなどの葉に穴を空けたり、ダイコンやカブの表皮をガサガサにしたりしてしまう土壌害虫の「キスジノミハムシ」などの防除には最適です。また、発芽したニンジンの茎を断ち切る「カブラヤガ(通称ネキリムシ)」など地中に生息する害虫対策としても有効です。

 確かに尋常じゃない暑さになっていますが、太陽のエネルギーを使って、土の消毒ができる、この時期ならではのソイルケアです。家庭菜園の方でも庭先の空いているスペースを確保して、熱消毒をやってみてください。病害虫のお悩みから、わずかでありますが、改善できるでしょう。

 次回はニンジン栽培のポイントを紹介いたします。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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