【糸島市】“熱かった”おむすびの時代 〜糸島の20年前を振り返る〜

 今秋から始まるNHKの朝ドラ「おむすび」をきっかけに、さらに注目度が高まると思われる糸島市。では、主人公・米田結が青春を謳歌したであろう2004年4月から07年3月までの糸島では、どんなことがあったのか。20年ほど前の糸島新聞からは、今につながる“熱気”が伝わってきた。

伊都歴史博物館

平原王墓の出土品が国宝指定

日本一の内行花文鏡が展示された伊都国歴史博物館

 中国の史書「魏志倭人伝」に登場する「伊都国」の名前を冠した伊都国歴史博物館が開館したのは、2004年10月29日。収蔵された直径46・5センチの銅鏡「内行花文鏡」などの「平原方形周溝墓」(平原王墓)出土品は06年、国宝に指定され、歴史のまち“糸島”を代表するシンボルとなっている。同年、平原王墓の墳丘を復元した平原歴史公園も開園。

 同博物館の岡部裕俊館長は国宝指定のインパクトについて、出土品が中学校の社会科用の教科書「新編・新しい社会歴史」に掲載されるなど、「周知が進んだ」と評価。

 朝ドラ「おむすび」のスタートをきっかけに、糸島の歴史が再び脚光を浴びることが考えられる。岡部館長は「国宝が、出土した地元の博物館に展示され、見つかった遺跡に足を運ぶこともできる。伊都国を一体的に、肌で感じてもらえるのは、とてもアピールになる」と話し、「日本最大の銅鏡を保管する博物館として、日本の歴史の中で伊都国がどう位置付けされ、どのような重要性があるのか、全国に発信していきたい」と語った。

前原名店街

活性化目指し“お祭り”騒ぎ

にぎわっていたかごかき合戦

 糸島一市二町(前原市、志摩町、二丈町)合併前だった2004年4月から12月までの糸島新聞をめくっていて、最初に感じたのが“お祭り”の多さだった。伝統行事から市民有志によるイベント、「前原市民まつり」といった大きな催しから校区や行政区単位の文化祭まで、さまざま。中でも特に目を引いたのが、ゴールデンウイークに合わせて前原名店街で行われていた第8回「前原宿かごかき合戦」だ。

 04年5月13日付の糸島新聞によると、「前原名店街の活性化を目指して行われ、4人の担ぎ手と乗り手1人、伴走1人の計6人でチームを作り、計7チームが参加。アニメキャラクターなどの仮装をし、かごを担いでタイムを競ったり、途中に設けられた関所では、ラムネの早飲みやクイズに答えたり、審査員の前では趣向を凝らしたパフォーマンスを繰り広げ、見物客の笑いを誘った」とある。

 イベントを企画した前原宿行ったり来たりの会の代表だった長田秀敏さん(74)は、前原名店街が旧唐津街道だったことに着想を得て「元気がなかった商店街ににぎわいを取り戻そうと始めた」と懐かしそうに当時を振り返った。
 時代は移りつつあるが、「商店街の活性化を」との思いは、20年たった今も変わらない。前原名店街の会長で、秀敏さんの息子、秀樹さん(48)によると、最近7年間で20店が開店し、現在空き店舗と呼べるのは「2店のみ」という。

 2人はおむすびの放映を契機に、「聖地巡りとか、糸島に来た記念になるお土産を考えるとか、“おむすび”は糸島にとって、地域活性化のまたとないチャンス」と声をそろえた。

正剛館志摩道場

雪残る白糸の滝に打たれ寒行

歯を食いしばり滝に打たれる道場生

 空手道の正剛館志摩道場(糸島市志摩小金丸、末松奈美師範)は、道場生による可也山1周マラソンを、新年最初の恒例行事としている。心身を鍛える目的で毎年行われているが、20年ほど前は少し形が違っていた。

 2007年2月1日の糸島新聞によると、同年1月28日、道場生たちは「自分に打ち勝つ精神力をつけよう」と、雪が残る前原市(当時)の白糸の滝に打たれる寒行を行った。

 寒行には、同道場だけでなく高取、今津の両道場の3歳から60代まで、約40人が参加。記事では「気温4度、雪がちらつく寒さの中で『六根清浄(ろっこんしょじょう)、六根清浄』と大声で唱えながら滝に打たれ、身を切るような水の冷たさに歯を食いしばった」とある。

 同道場の寒行は、2020年まで約30年続いたが、積雪による度重なる中止や安全面を考慮し、現在のマラソンに切り替わった。

 父の宮下正敏師範から道場を引き継いだ末松師範(49)は、「(滝行は)寒いのを通り越して、痛かった」と当時を思い出す。

 子どもたちは衣装ケースにためた湯に漬かり、保護者が用意した豚汁を口にし、芯から冷えきった体を温めた。末松師範は「寒げいこを経験した子どもたちは、少々の困難にも『滝に打たれることに比べたら』と気持ちが強くなり、見違えるほど成長したのを覚えている」と懐かしそうに振り返った。

2004年4月―12月のイベント

 2004年4月から12月までの間に、福岡市西区今宿以西で行われたお祭りで、目についたものを挙げてみた(地名や団体名などは新聞掲載当時のまま)。

 4月
●前原市の池田川沿いの桜の下で3日、「池田川桜まつり」(池田清廉会主催)
●県指定文化財の木造十一面観音立像などが安置された志摩町小金丸の虚空蔵堂で11日、途絶えていた縁日を復活
●糸島市高祖の市農業公園・ファームパーク伊都国で24、25日、「農力文化祭」

 5月
●志摩町の一大イベント「志摩の五月2004」が1日から5日まで町内各地であり、イチゴ狩りや工房・ギャラリー巡り、姫島が舞台の映画「ここに幸あり」の上映会などを実施=写真1

写真①

 7月
●泉川に群生するハマボウの保護活動を続ける泉川はまぼうの会が11日、し尿処理施設・筑泉荘で第7回「はまぼう夢まつり」開催▽福岡市西区の弁天川で18日、第8回元岡いかだ大会(JA福岡市青年部元岡支部など主催)=写真2

写真②

 8月
●福岡市西区の長垂海岸で5日夜、第22回今宿地区納涼大会「まつり今宿」(今宿校区自治協議会など主催)があり、約1,500発の花火を打ち上げ

 9月
●志摩町御床の沖田川(通称・新川)で26日、「秋の志摩海岸04」(志摩町観光協会主催)があり、放流した約3千匹のタイやブリなどをつかみ取り=写真3

写真③

 10月
●前原市の前原中央公園をメーン会場に2、3日、第12回前原市民まつり「伊都国夢追いフェスタ」(前原市、前原まつり振興会主催)
●福岡市西区の西浦漁港周辺で17日、鮮魚や花などの特産品を販売する第4回「北崎花鯛郷(はなたいこく)まつり」(花鯛郷北崎郷づくり実行委主催)開催▽福岡市の今津運動公園隣接地で30日、乳牛コンテストなど「糸島モーモーフェスティバル2004」(糸島地方酪農業協同組合主催)
●前原市のファームパーク伊都国で31日、「いとのくに収穫祭」

 11月
●前原市の前原中央公園に7日まで、丹精込めて育てられた菊の花が並んだ第17回「前原市菊花展」(前原市、市教委主催)=写真4
●志摩町東貝塚の身体障害者授産施設「小富士園」と社会就労センター「こふじ工房」で3日、第21回「たちばな祭」実施
●志摩町小富士のJA糸島アグリで12日から14日まで、一大イベント「ドリームフェスティバル」
●福岡市西区の元岡小周辺で20日、2千発の花火など「ありがとうふるさと元岡 豊年花火大会」(元岡商工連合会主催)

写真④

 12月
●前原市の前原名店街などに出店がずらりと並び、3日から5日まで同市商工会七支部連合会の第94回「商工祭り」
●前原市の伊都文化会館で12日、公募で集まった合唱団が「歓喜の歌」を歌う「前原ふれあい音楽祭」(同実行委主催、前原市教委共催)

 上に挙げたお祭りやイベントは、伝統行事などを除く比較的大きなものばかり。このほかにもコンサートや、各校区や地域で行われた夏祭り、文化祭などが、紙面をにぎやかに飾っていた。

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この記事を書いた人

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