【糸島市】バイオ液肥を共同研究

養豚農家、九大、糸農、市連携

 糸島市と九州大、糸島農高、市内の養豚農家が連携し、豚のふん尿などの排水から肥料成分を抽出し、濃縮バイオ液肥として資源化する共同研究に取り組んでいる。市農業振興課は「養豚農家が抱える環境問題と経済的課題を解決に導きながら、資源を糸島域内で循環し、持続可能な農業の実現にもつなげられれば」と期待を込める。

 糸島市は、「糸島牛」や「糸島豚」などで知られる県内有数の畜産が盛んな地域。一方で、2004年の家畜排せつ物法の本格施行で設置された処理施設が更新時期を迎えていることもあり、家畜のふん尿処理にかかる費用は、畜産経営にとって負担となっている。

 研究では、九州大が養豚農家からサンプルとなる畜産排水の提供を受け、不純物を分離し、0.005マイクロメートル(100万分の5ミリ)の薄い膜でろ過した後、電気透析技術を使って窒素やリン酸、カリウムなどの肥料成分を濃縮して回収。

 糸島農高園芸技術科の生徒などが9月中旬から12月にかけて、濃縮バイオ液肥を使ってキャベツなどを試験的に栽培する。

 同大大学院農学研究院の矢部光保教授によると、築上町で人間のし尿などを原料とした濃縮バイオ液肥を使い、同高で育てたトマトやスイカは「糖度が2度上がった」と説明。白菜ではうま味成分の「L-グルタミン酸」が2倍以上含まれ、「味が深くなり、皮がしっかりすることで日持ちも良くなる」という。

濃縮バイオ液肥を使って育てたミニトマトを収穫する糸農高生

 「農業者の方たちが使いやすいように、作物と栽培方法に合わせた肥料を作るのがこれからの課題」と矢部教授。今後は、できたキャベツの糖度やうま味などの分析を詳細に行う。同課は「原料の大半を輸入に頼る化学肥料の価格は高騰しており、これまで費用をかけて処理していたふん尿を液肥の原料として資源化できれば、まさに一石二鳥」と成果に注目している。

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