【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.83(8/2号掲載)

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カミキリムシの襲来

 暑いのはわかりますが、今年の夏の暑いこと。近所の農家さん。「朝早よう起きて、野菜の収穫しよったら、8時前にはもう30℃超えとるもん。夕方もいつまんでも暑かし、用心しとかにゃ、無理したら、大変なことになるばい」。その通り。命にも関わる危険な気温が続きますので、皆さんも無理しないでくださいね。

 しかし、この異常な暑さでも果樹類を枯らしてしまう厄介な害虫が活動しています。その名も「カミキリムシ」。別名「テッポウムシ」ともいい、果樹の難敵害虫です。長い触角と強靭(きょうじん)なアゴを持つ細長い甲虫、カミキリムシ(髪切虫)。その名の通り、髪をもよく切ることができる虫です。

 カミキリムシはコウチュウ目・カミキリムシ科の甲虫。世界でおよそ3万7千種と推定されていて、日本だけでも約800種が知られており、種類がとても多いです。光沢のある黒い身体に白い斑点模様の「ゴマダラカミキリ」や、のこぎりのようなギザギザした触角を持つ大型の「ノコギリカミキリムシ」=写真=など。果樹園や自宅周辺や庭などで、キーキー、ギーギーといった鳴き声が聞こえたら、近くにカミキリムシがいる可能性も。

 特に果樹生産農家にとって、最も厄介なのが、「ゴマダラカミキリ」。カンキツ類・カエデ類・バラ科の植物の幹に危害を加え、活動期間も長く、青みがかった光沢のある黒色に、不規則な白い斑がたくさんあり、長い触角を持ちます。触角の長さでオスとメスを見分けることが可能(メスよりもオスのほうが長い)です。食性は幅広く、カエデ類やイチジク・サクラ・リンゴなどのバラ科、サルスベリなどに寄生。夏頃になると成虫のメスが幹の下のほうに卵を産み付けます。約1週間で孵(ふ)化し、幼虫は幹の中を食害します。幼虫は7月~翌4月、成虫は5~7月に発生しやすいです。

 有機的な対策としては、「定期的な剪定(せんてい)と枯れ木の掃除」。植物の元気がなくなると産卵されやすくなるため、古い枝などは剪定して、元気に育っている枝を残しましょう。剪定後の枯れた枝などはすぐに処分してください。そのまま放置しておくと、カミキリムシが集まってくることがあります。

 発見した場合、すでに木の幹に穴をあけて卵を産み付け、その中を幼虫が食害している可能性があります。移植間もない若木などは枯死する可能性もあります。産卵されると被害が大きくなるため、成虫を見かけたらすぐに駆除することをおすすめします。

 樹木に穴を見つけ、カミキリムシの幼虫が幹の中に入っていると思われる場合は、針金タイプのハンガーや針金を使って、中の幼虫を取り除き、駆除してください。

 もし、被害が拡大していたら、スプレータイプの駆除剤もありますので、詳しくはJAや園芸店にご相談ください。

 カラフルで特徴的な模様がある種類も多いカミキリムシは一見可愛い面もあるので、子供たちに人気の昆虫である一方、庭木や木材を加害する厄介な害虫でもあります。樹齢1~2年目の若い苗木や幹が柔らかいイチジクなどは、幼虫1匹が寄生・加害しただけで致命傷となり、枯れてしまうことがあります。また、家の中の木材を加害された場合、深刻な状況になってしまうこともあるため要注意です。1匹だからと油断せず、カミキリムシを見かけたら、すぐに対処することをおすすめします。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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