【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.85(8/23号掲載)

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漬物事情

 お盆を過ぎてもなかなか涼しくなりませんね。8月22日は農業暦で「処暑」。暑さが峠を越え、少しずつ和らぐ頃で、秋の気配を感じられる時期を指していますが、温暖化が進んでいるのでしょうね。

 私の30年前の園芸作業は、秋バレイショやニンニクなどの種球の植付適期とアドバイスしていましたが、今は「ちょっと、植付は止めとってください。地温が高過ぎて、種球の腐れますばい」。植付時期を遅らせて、いつが適期なのか探っているところです。一日も早く、本来の秋が近づくのを願っております。

 さて、前回はお盆文化の食の一つとして「奈良漬」をご紹介いたしました。ところが、奈良漬を含む「漬物事情」が大きく変化してきています。ご存じのように、身近な直売所などから、漬物が激減しています。

 食品衛生法の改正に伴い、今年6月以降は、専用の加工場など衛生的な施設で製造した漬物しか販売できなくなったため、手作りで人気のベテランの出荷者も国が定める衛生基準をクリアする設備で製造した漬物しか出荷できなくなりました。

 漬物には塩加減や熟成期間など、出荷者個々の個性が楽しめる大切な食文化でもあったと言えます。特におじいちゃん、おばあちゃんの漬物は、昔から味覚の感覚を体で蓄えた加工技術が、多くの多くのファンをつかんでいたと思います。

 一部の直売所では、既存の遊休施設を改修し、専用の加工場を設置したりされていますが、多額の資金も必要であり、100円~200円前後で販売されている高齢の出荷者には、コストがかかり過ぎて、負担が大きすぎます。

 「今まで、一生懸命、よかダイコンやハクサイば育てて、漬物にして直売所に出荷しよったばってん、もう無理やな」「自分で食べるだけ漬けまっしょ」と近所の元気なおばあちゃんも少し、肩を落とされて残念そうでした。

 確かにこの時期は、気温も高く、人の体力も弱っているのに加え、食中毒の発生確率も高いので、加工衛生管理は重要なものと理解します。漬物の魅力は、ビタミンCや植物性乳酸菌も豊富に含まれており、食物繊維を多く摂取できるので、野菜の栄養をしっかり取ることができます。

 さらに、食物繊維は、腸内環境の改善、整腸作用、便秘の改善などに効果があると言われています。腸内環境を整えると、全身の健康にもつながり免疫力の向上にもなります。身近な栄養食材かもしれません。

 そこで、私は各地の栽培講習にて、自家製漬物作りをご紹介しています。今は情報化社会。ネットを調べれば、老若男女、だれでも低コストで簡単に手作りできる漬物を紹介されています。実際、私の妻も、漬物好きの私のために、いろんな野菜を試しながら、ぬか漬け、浅漬けなどを頑張って作ってくれています。暑いとは言っても、いよいよ秋の野菜栽培シーズン到来。野菜作りの目標に手作り漬物も視野に入れ、人気のハクサイ、ダイコン、カブ栽培にチャレンジしてはいかがですか。

コトウおすすめの市販の素に負けない!手作り浅漬けの素
《材料
A 水 50〜100cc(漬ける野菜や漬け込み時間で調整してください)
B 酢 大さじ1
C 砂糖 大さじ1/2
D 醤油 小さじ1
E 塩 小さじ1(水100ccの場合塩小さじ1と1/2)
F だしの素 小さじ1
G かつお節 1パック2g
H 輪切り唐辛子 お好みで適量(辛いのが苦手な方は無しで)

キュウリやカブなどを漬けて楽しんでください

妻が漬けたパプリカとキュウリのぬか漬け

 今後、このコーナーにて、おいしく育てる裏技など、どんどん発信していきますね。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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