カキ小屋「のぶりん」の古藤海星さん
糸島市志摩の岐志漁港でカキ小屋「のぶりん」を家族で営む古藤海星さん(23)が3月22、23日、東京都の豊洲市場で開催された「第2回全国牡蠣(かき)-1グランプリ」イワガキ部門で、見事グランプリに輝いた。

岩のようにごつごつとして、殻は手のひらほどの大きさになる「イワガキ」。そんなイワガキのイメージを覆す、一口サイズのイワガキ「姫夏(ひめか)」を開発し、大会に挑んだ。「姫夏」は、ふた側の殻に成長過程で生まれるヒダが美しく重なり、身が収まるカップ側は深く、手のひらにコロンと収まるかわいらしい形状が特長だ。

両親のカキ養殖を手伝いながら、古藤さんが取り組んでいるのは、日本ではまだ珍しい「シングルシード方式」と呼ばれる養殖法。稚貝を海中に沈める従来の方法とは異なり、筒状のバスケットに入れて海面に浮かべ、波の力を利用しながら育てるスタイル。バスケットの中でカキ同士がこすれ合うことで、殻の表面はつるりと美しく仕上がり、栄養が殻に取られなくなる分、身に旨みが凝縮される。さらに、浮きの数を調節してバスケットを浮かせたり沈めたりしながら育てることで、貝柱が引き締まり、表層の植物プランクトンを豊富に取り込むことができる。
全国8カ所から出品されたイワガキ部門で、「姫夏」は決勝に進出。ホテルの総料理長やイタリアンのオーナーシェフなどの審査員たちの舌をうならせ、「しょっぱさと甘さ、全体のバランスが絶妙」と好評を得た。
「夏の異常な高温など、環境が変わってきている中で、生産者として考えることがたくさん」と語る古藤さん。大会では、全国各地から集まったカキ養殖の先達たちとの交流で刺激を得て「もっといける。やれることがまだまだある」と目を輝かせる。
オンライン中継で受賞の瞬間を見守った母・広子さんは「まだまだ駆け出し。周囲の人に恵まれて、育ててもらっている」と目を細めた。
若き挑戦者は、周囲の温かな応援と「好き」を原動力に突き進んでいく。
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