【糸島市】糸島市 国際通信の新拠点に

海底ケーブル陸揚げ地に選定

ソフトバンク 東アジアとの接続期待

 ソフトバンクが進める国際海底ケーブル「E2A」の新たな陸揚げ拠点として、糸島市が北海道苫小牧市とともに選定された。国際情報通信網の強靭化(きょうじんか)とリスク分散を図る取り組みで、2028年下期の運用開始を目指す。糸島市がアジアと北米を結ぶ情報通信の重要インフラの一翼を担うことで、地域経済の活性化や産業誘致にも期待が高まる。

日本とアメリカ、アジアをつなぐ国際海底ケーブル「E2A」(画像提供:ソフトバンク株式会社)

 総務省が推進する「国際海底ケーブルの多ルート化によるデジタルインフラ強靭化事業」の公募において、同社が採択された。米国のモロベイ(カリフォルニア州)、韓国の釜山、台湾の頭城と日本を結ぶE2Aは、太平洋を横断する総延長約1万2500キロメートルの海底光ケーブル。当初の計画では、千葉県南房総市の「ソフトバンク丸山国際中継所」が国内唯一の陸揚げ拠点となっていたが、新たに糸島市を含む2拠点が追加されることになった。

 背景には、クラウドコンピューティング(インターネット上のデータを使って、パソコンやスマホでさまざまなサービスを受けられる仕組み)やデータ処理、次世代モバイルネットワーク(新しい携帯電話やスマホの通信技術)の需要増加がある。特にAI(人工知能)の急速な発展により、大容量で超低遅延のネットワーク環境を整備する必要性が高まっている。

 また、地震など大規模災害時の通信途絶への対策も喫緊の課題となっている。政府は「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、データ処理や電力消費、データセンターや海底ケーブルといった情報インフラを国内に分散配置することで、リスクの軽減を目指している。

 E2Aケーブルは、1秒当たり192テラビット以上という大容量通信を可能にする12本のファイバーペア(光を通す細い線)を備える。

 ソフトバンクの執行役員テクノロジーユニット統括モバイル&ネットワーク本部の大矢晃之本部長は「いよいよAIが本格的に実装される時代を迎え、情報の大動脈として日米間はもちろん、主要アジア間を結ぶ国際海底ケーブルの重要性が高まっています」と述べる。

 糸島市が選ばれた理由について、同社は「東アジア地域との接続に適した地理的特性を持ち、日本の国際通信ハブ(データの中継・交換を行う重要拠点)としての地位強化につながる」としている。

 同社広報は、陸揚げ拠点の施設規模や運用による雇用創出などについて「現在、関係機関と調整中で、安定運用や将来の需要拡大に対応できる拡張性・(障害や故障への準備としての)冗長性・環境配慮を備えた設計方針で進める」とし、漁業や地域社会との共生に関しては「今後、地元自治体や漁業関係者との協議を継続し、透明性ある情報公開に努める。環境保全や漁業操業について、影響を最小限に抑えるよう、最大限の配慮をもって事業を進める」と説明。

 地域社会への貢献策に関しては「半導体関連産業や多様な通信ニーズへの対応など、地域経済活性化に資する連携のあり方を今後検討するが、現時点で具体策は未定」とコメントした。

 月形祐二市長は「本プロジェクトは地域経済の活性化はもとより、デジタル分野における新たな展開をもたらすものとして大きな期待を寄せている。『安心と豊かさが続く糸島』の実現に向けた力強い追い風になると確信していると同時に、農林漁業や豊かな自然環境、地域の暮らしにも十分に配慮しながら、計画が着実に進められることが重要であり、バランスの取れた取り組みが求められる。地元行政として、関係機関等と緊密に連携を図りつつ、引き続き適切かつ丁寧に対応していく。本プロジェクトを、糸島の未来を切り拓く新たな一歩と位置づけ、市政のさらなる推進に努めたい」と期待を寄せた。

糸島新聞社ホームページに地域情報満載)

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