【糸島市】空き家対策活用法さまざま

地域に溶け込む民泊「田辺ハウス」

ごみ出しルール徹底や行事参加も

 全国的に空き家が増加する中、その利活用を促進するさまざまな対策が講じられている。近年では、移住・定住にとどまらず、空き家を活用する新たな動きも広がりを見せている。

 糸島市で中古住宅を購入・改装し、地域に溶け込んだ民泊を運営する事例を紹介する。

 糸島市二丈のJR一貴山駅からほど近い場所に立つ築50年の民家。空き家だったその家は、2023年に民泊「田辺ハウス」として生まれ変わった。

「すぐ横に田んぼが広がるから『田辺』ハウス」と名前の由来を語るオーナーの蒋さん(右)と譚さん

 運営するのは、市内に暮らす中国出身の譚旭輝(たんあさき)さんと蒋詩琪(しょうしき)さん夫妻。もともとは週末を過ごすセカンドハウスとして購入したが、手入れに通ううちにすっかり地域に馴染み「この場所の魅力を訪れる人と共有したい」と、2人で営む民泊施設としての活用を決めた。以来、フランス、アメリカ、韓国、タイなど世界各国からの旅行者を迎え入れている。ゲストブックには「おばあちゃんの家に来たみたい」「自然豊かで心地よく過ごせた」など多言語での感想やイラストが並ぶ。

 室内には、ごみ出しのルールや近隣への配慮を記した案内も掲示し、騒音やマナーの面でも地域に迷惑をかけないよう注意を払う。また、利用者の声を受け、板を張り替えたり、子ども用の食器をそろえたりと、細やかな手入れを重ねてきた。「気持ち良く過ごしてもらい、糸島での思い出がすてきなものになるように」と笑顔で話す。

 日本や日本文化をこよなく愛する2人は「この場所がとっても好きだから、住民として私たちにできることがあれば地域へ恩返しをしたい」と自治会にも加入し、草刈りや地域行事にも積極的に参加する。

 ただ、市外に居住して、地域との関係性がないままにゲストハウスや民泊施設を運営するケースも増えている。市では「地域コミュニティーの持続可能性という観点から、地域に根差して暮らし、担い手となってくれる人に活用してもらいたい」(市担当者)とする。

◆メモ
 糸島市によると、市内の空き家は2022年度時点で1,075戸。空き家を放置すると、倒壊の危険や景観悪化、不法侵入などさまざまな悪影響が近隣住民に及ぶ。市では「空き家バンク」や「戸建て住宅ニーズバンク」の仕組みを整え、「わが家の未来ノート」を使った家の将来を話し合う機会の促進などに取り組み、空き家の利活用を促進する。

糸島新聞社ホームページに地域情報満載)

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この記事を書いた人

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