【糸島市】10月は「がん検診受診率向上」月間 早期発見で治療可能に

乳がん乗り越え「経験伝える」 50代女性

 10月は「がん検診受診率向上に向けた集中キャンペーン月間」。国立がん研究センターの統計によると、日本人は男性の62.1%、女性の48.9%が一生のうちにがんを経験するとされ、今や「特別な病気」ではなくなっている。

 生活習慣の改善でリスクを減らすことができる一方、自覚症状のないまま進行するケースも少なくない。日本人に多い肺がんや大腸がん、乳がんなどは早期に発見すれば治療効果が高く、検診の重要性が増している。

 糸島市の実施するがん検診は、加入している健康保険の種類に関わらず、対象年齢に該当している市民は受診できる仕組みが整っている。

 市健康づくり課は「検診は『まだ大丈夫』と思う時こそ受けてほしい」と呼びかける。がんは早期発見できれば多くが治療可能で、身体への負担も小さい。治療中の生活を支えるため、市では医療用ウィッグや補整具等の購入費の補助も行っている。担当者は「『見つかっても治せる』時代。自分のため、家族のためにも検診を受けてほしい」と強調する。

 がんは今や誰にとっても身近な病気となり、検診の受診や気になる症状を放置しないことが大切。

 コロナ禍の2021年、胸にしこりのような違和感があり、病院を受診した50代の女性は、しばらく検診を受けていなかったことを悔やんだという。

 観光業関連の仕事が暇になったからと軽い気持ちだったが「まさか」。再検査の結果は乳がんの「ステージ3b」だった。抗がん剤で腫瘍を小さくしたのち、切除手術を受けることになった。

 「なんで私が…」。とまどいや不安を抱えながら、他に転移がないかの検査などが続き、涙にくれる日々だった。約1カ月後「やっと治療が始まる」と安どと治療への恐怖の入り混じる思いで入院し、3種類の抗がん剤を点滴で投与する治療に臨んだ。じんましん、味覚障害、倦怠(けんたい)感、脱毛…。副作用は随所に現れた。

 抗がん剤で腫瘍は縮小し、22年1月末には切除手術を実施。医者からは「ステージゼロになった」と告げられた。しかし、ほっとする間もなく、転移の可能性を考えた予防治療が始まった。25回に及ぶ放射線治療と、ホルモン抑制剤の服用、分子標的治療のための通院が続いた。体力や気力が落ち込み、家に閉じこもる日々が続いた。

 そんな時に出合ったのが、がん患者に手作りのタオル帽子を届ける糸島ハートの会」。思い切って参加し、同じ経験をした仲間とおしゃべりをしながら縫い物に取り組んだ。「ずっと食欲がなかったのに、その日はご飯が食べられたんです」。最初に縫ったタオル帽子は記念に今も手元に置いている。不ぞろいな縫い目に「あの時の気持ちがよく表れている」とほほ笑む。

おしゃべりしながら手を動かすハートの会の活動の様子

 手術から3年。体調を見ながらアルバイトを始めた。さらに「いつどうなるか分からない。やれる時にやろう」と以前から興味があった通信教育で学ぶ新たな挑戦にも踏み出した。これまで興味のなかった花にもひかれるようになり、園芸ショップにも頻繁に足を運ぶようになった。

 「自分がなるとは思わなかった」と振り返る。治療の影響で体力や免疫力が低下しあちこちが不調に。「病院通いばっかり」だったが、今はハートの会のメンバーとイベントに出店したり、講師となって経験を話したりと世界が広がっている。「自分の経験が誰かの役に立つと思うと力が沸いてくる」と笑顔を見せる。

糸島新聞社ホームページに地域情報満載)

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この記事を書いた人

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