いと経営学者がワークショップ
大切な人の人生の記憶をのこしたい-。糸島市前原西の「一般社団法人いと経営学舎」(塙達晴代表理事)が、忘れたくない記憶をのこすためのノート「kiokuroku(記憶録)」を開発した。自分自身に関する36の設問が並ぶB5判のノートで、贈る人と受け取る人がともに記憶を紡いでいく仕組み。
まず、贈る側が各ページの問いに沿って、相手について知っていることや聞きたいことを書き込む。贈られた側は、その記述も手がかりに自分を振り返り、空欄を埋めていく。「自分史」のように一方的に書き留める形式ではなく、対話を通じて1冊が完成する点が特徴。
開発の背景には、塙さんが30代でキャリアに悩み「大好きだった祖父の考え方や物の見方などが記録として残っていれば」と感じた経験がある。「身近な人の記憶には大きな価値がある」と気づき、忘れたくない記憶を形に残すノートの発案に至った。さまざまな組織における対話の場の経験を活かし、思いを表現しやすく、過去の棚卸しから未来を考える流れが自然につながるよう、設問を丁寧に吟味した。
11月15日には、前原中央の古材の森で、簡易版「小さな記憶録」を使ったワークショップも開催。小学生を含む7人の参加者が人生年表や節目での記憶、「安心できる瞬間は?」「どこでも暮らせるなら?」「誰に何を伝えたい?」といった問いに答えながら、あらためて自分を振り返る時間を過ごした。参加者からは「このノートを通して、これまで衝突ばかりだった父を理解してみたい。そうすれば、今後の自分の人生も変わる気がする」といった声も寄せられた。

塙さんは「家族や友人のように近しい存在でも、実は『知らないこと』は意外と多い。あなたの言葉が誰かの支えになるかもしれない。定年退職など人生の節目に、大切な人へ贈ってみてほしい」と話す。
記憶録は税込3,300円で公式サイト「kiokuroku」から購入できる。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)
