68年ぶり大相撲糸島場所
大相撲糸島場所が2日、糸島市の運動公園で開かれた。1957(昭和32)年11月の前原場所以来、68年ぶりの巡業開催。同公園の多目的体育館中央には土俵が設けられ、幕内力士ら総勢約100人が参加。横綱の豊昇龍関や九州場所で初優勝した安青錦関らの雄姿を一目見ようと、会場には多くの相撲ファンが詰めかけ、満員御礼の客席は、約3千人の熱気で包まれた。

7月に枝川親方(元幕内蒼樹山)が市役所を訪れ、「力士を身近に感じることのできる機会になる」とPRしていた通り、会場には髪を固めるびんつけ油特有の甘い香りが漂い、通路では小さな子が大きな力士とハイタッチをしたり、写真撮影に気軽に応じたりする姿が見られた。サインを書いてもらおうと色紙を手にファンが待っている様子も、相撲人気の高さが伝わる光景だった。出番を待つ力士が会場の隅でトレーニングする姿も垣間見ることができ、ファンを楽しませた。
土俵上では公開稽古が始まり、まわし姿の力士たちが四股を踏み、背中ににじむ汗が照明に照らされ、ぶつかり合う音が館内に響いた。福岡市西区の吉川遼架(はるか)さん(7)は、2歳の時から大好きな王鵬関を応援。「低い体勢をとるところがかっこいい」と目を輝かせた。
関取が地元の保育園の園児に胸を貸す「子供稽古」もあり、5歳児の男の子たちが山のような力士を押し出すと、客席からは大きな拍手が起こった。同園の橋川英叶(えいと)さん(6)は「おすもうさんは大きかったけど、本気出したら勝てた」とにっこり。
相撲の禁じ手をコミカルに紹介する「初切(しょっきり)」では、力士2人がコントさながらのやり取りを繰り広げた。「髷(まげ)を引っ張ってはいけない」という禁じ手を逆手にとり「髷が手のひらに入ってきた」とおどけて見せたり、大量の塩をまいたり、ボクシングを真似た動きをしたりとサービス満点。大きな体でのコミカルな動きに、会場全体がドッと沸いた。
相撲甚句(じんく)では、七五調の独特な語り口に合わせ、観客も手拍子で合いの手を入れていた。
昨年の九州場所で観戦してからすっかり虜になったという福岡市の会社員、梯綾乃さん(32)と樽谷亜理紗さん(41)は、「ただ大きいのではなく、強くなるためにしっかり食べて体をつくる。そんな姿がかっこいい」と口をそろえ、本場所では見られない力士同士のやり取りや素の表情に目を輝かせた。
午後になると、熱気は最高潮に。華やかな化粧まわしをつけた幕内力士や横綱の土俵入りが行われると、四股に合わせて「よいしょ」の掛け声が飛んだ。幕内取組では、横綱の豊昇龍、新大関の安青錦といった注目の力士たちが土俵に上がり、タマリ席の観客は、力士たちの立ち合いの衝撃音や息遣いを全身で感じていた。糸島市井原の田中郁代さん(91)は「迫力にびっくり。糸島で大好きな相撲を見られて、本当にいい思い出」と満足げに話していた。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)
