初冬の澄んだ青空に誘われ、久しぶりに糸島の南側にそびえる脊振山系の林道沿いのドライブを楽しんだ。峰々の中腹を横断するこの道沿いには、糸島を代表する観光地の白糸の滝と雷山千如寺があるが、ほかにも心癒やされる風光明媚(めいび)な行楽スポットがあり、「空中散歩」をするような気分で巡ってみた▼最初に訪ねたのが平家落人の哀史が伝わる唐原(とうばる)の集落。平重盛の内室と2人の姫が山間にあるこの地に逃げ延びてきたが、源氏の追手によって命を絶たれたという。姫たちが水際で舞を舞ったとの言い伝えがある千寿院の滝に向かってみた。山道に踏み入ると、案内板が目に入った。それには、滝がある川の水の配分を巡り、江戸時代に起きた集落同士の争いを収めた和尚の逸話が記されていた。脊振山系の豊かな水源があるからこそ、糸島で広大な農地が営んでいけるのだと実感させられた▼唐原から林道へと上っていく道は通行止めのため、一旦、山を下り、加茂ゆらりんこ橋方面から林道へと進んでいった。次の目的地は、林道のそばにある「はろ展望台」。眺望がきくよう周辺の林が整えられ、海岸線の入り組んだ糸島半島が箱庭のように見渡せた。まさに一望千里の眺めだ▼どんどん東へ車を走らせていくと、古代山城跡の雷山神籠石(こうごいし)へ向かう分かれ道がある。道沿いには、緑に包まれて神秘的な雰囲気の不動池。その北側に、石で築かれた水門と急斜面に配された列石の遺構がある。大陸との緊張が高まっていた7世紀の築造。海の向こうから侵入する外敵をいち早く見つけるための「天空の城」だったのか▼再び林道に戻り、さらに東へ進む。夕日が差す時間帯になっていた。その光を浴びて輝いていたのが雷(いかづち)神社の大イチョウ。高さ37メートル、樹齢は900年以上と推定されている。神社がある雷山中腹の一帯には、かつて300の僧房があったとされる。玄界灘を望む位置にあり、鎌倉時代には、元寇(げんこう)に対する祈禱(きとう)が行われた。古くから歴史を見つめてきた神々しい大イチョウに手を合わせ、林道沿いの旅を終えた。
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