【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.88(9/13号掲載)

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秋冬野菜栽培のQ&A

 今回も、JA福岡市東部女性部栽培講習会開催の際にいただいた、栽培に関するたくさんのご質問の中から、回答をいたします。

 Q ブロッコリー、カリフラワーが小さくて、なかなか大きく育ったものが収穫できない。

 A 秋冬野菜の重要な作物ですね。特にブロッコリーは、国が国民生活に重要な野菜として位置づける指定野菜になったため、さらに需要増が見込まれます。ご質問の作物で、共通な点が、ともに多肥性作物であり、元肥三分の二、追肥三分の一のバランスで施肥する必要があります。特に追肥の与え方も重要で、1回目は活着して生育を始める頃(おおむね定植2~3週間)、2回目は花蕾(からい)が見え始める頃とし、同時に中耕と土寄せをします。

 さらに、今一つ、花蕾が育たない場合は、花蕾が500円玉よりちょっと大きいくらいになったのを目安に3回目の追肥をしてください。追肥は、水に溶けやすい、速効性肥料を使うのが効果的で、生育が気温の低下とともに鈍化していくことから、早めに効果を出す必要があるためです。

 1回目の追肥が遅すぎると葉展開期に養分が不足して、葉数と葉面積が少なく、花蕾に十分な光合成産物を供給しない恐れがあります。また、栽培期間が長い植物においては、植え付けから2~3週間目で根がある程度伸びて、養分を吸収するための準備ができあがります。なので、1回目の追肥はしっかり根を作るための栄養でもあります。

 2回目の追肥が早すぎると花蕾発生と肥大期の後半に養分不足に陥り、遅すぎると逆に収穫期まで養分が残って、ともに花蕾に十分の栄養を与えず、期待通りの収量が得られない恐れがあります。

 Q ホウレンソウに肥料をあげた後、葉が黄色くなった。肥料のあげ方を知りたい。

 A 追肥後の葉の黄変とのご質問ですので、いくつかの見立てが必要です。

 ◎密植傾向だと生育が抑制され、直根が伸びず、側根ばかり伸び、吸肥力が低下しています。それでもどうにかして生育を高めようした際、追肥を与えても根が弱いため、吸収できずに葉の色が黄色くなってしまったと考えられます。
 ◎カルシウム欠乏から始まり、連動して窒素肥料の吸収低下に至っていく現象でも、葉の黄変が進行します。カルシウム成分は非常に重要であり、追肥として意識的にカルシウム成分を追肥し、吸肥力の維持に努める必要があります。
 ◎黄変した葉裏にネズミ色胞子が確認されたら「べと病」発生が考えられます。ホウレンソウのべと病に対しては、品種改良によって抵抗性を持った品種の開発などが進んでいますが、日照不足や長雨などの高湿度などの条件が重なると、必ずと言っていいほど発生します。予防薬散布が望ましいでしょう。

 その他、「こんなに気温が高いのに、ハクサイの種はいつまいたらいいの?」「毎年、貯蔵用タマネギを育てるけど、大きくならず、まともに収穫ができないので、悲しい」など、たくさんのご質問を受けております。

 私個人の経験値からすると、栽培に関するご質問の割合は、病虫害対策が40%、肥料、土づくりに関すること 25%、生理生態、有機栽培 25%、その他(資材・農具など)10%。本来は、もっと細かくなるのですが、おおむねの数値です。

 天候や土壌の質など、変化する自然環境の中での作物栽培は、いろんな問題も発生します。皆さんと情報を共有しながら、健全な作物栽培をご支援させていただきます。

 (シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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