福岡市美術館で開催中のブルックリン博物館所蔵特別展「古代エジプト」に足を運んだ。彫刻やひつぎ、宝飾品といった展示品に見入りながら、ファラオ(王)やピラミッドなどの巨大建築物、人々の暮らし、死生観に思いをはせた。中でも心をひかれたのが古代エジプト人と猫との関わり。先週に引き続き、猫の話題をつづりたい▼特別展で猫に関連した展示は、ブロンズ製の猫の座像と、猫のひつぎとミイラ。古代エジプト人は猫を崇拝していた。それを示すのが守護や豊穣(ほうじょう)、母性、歓喜の女神バステト。もともとは雌ライオンの姿でかたどられていたが、猫が家畜化され、ネズミやヘビから家や穀物倉庫を守る存在になると、猫は神聖視されるようになった。そして、バステトは猫の姿で表現されるようになった▼古代ギリシャの歴史家ヘロドトスは、古代エジプト人の猫の崇拝について、こんな記述を残す。飼い猫が死ぬと、家族全員が眉毛をそり落とし、悲しみと敬意を表したというのだ。猫の遺体は、ひつぎで保存されることにより、バステトの霊魂になると信じられていた。展示中の猫のひつぎとミイラは、当時の人々が猫をどのように認識していたか、ありありと伝える▼猫が古代エジプトの家庭で愛されていた様子を物語る有名な絵が大英博物館にある。王朝に仕えた書記官ネブアメンの墓に描かれた紀元前1350年ごろの壁画。舟に乗って沼地で野鳥狩りをしているネブアメンに猫がお供し、鳥にとびついてお手伝いをしている▼カラフルな壁画に描かれた猫は、日本でもよく見かけるこげ茶色に黒い縞模様が入った柄のキジトラ。家で飼われている猫の祖先は、北アフリカなどの砂漠地帯に生息するリビアヤマネコとされ、その柄はキジトラとよく似ている。言い換えると、家庭にいるキジトラは、最も原種に近い面影を残しているということだ。現代の人と猫との関わり合いの原点となった人とリビアヤマネコとの出会い。人類史にとって、とても大きな出来事だったのではないだろうか。そう思うのは、愛猫家だからだろうか。
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