野菜の中耕と追肥
作物を上手に育てる上で、特に露地野菜ではプロが欠かさず行う作業が、作物の条間(野菜と野菜の間)を軽く耕す「中耕」と、野菜がある程度育ってから株元に土をかけてやる「土寄せ」です。「苗ば植えた後、天気はよかとばってん、なんか太らんちゃんね」。
いろいろ要因はありますが、地表面が降雨などで硬くなり、新鮮な酸素や養水分が根に届かないことなどが起こると、土壌養水分の吸収力も衰え生育が停滞します。
そこで、地表面を軽く耕すことで、表面を軟らかくすることで、作物の根がよく張るようになる(根痛み防止)▽通気性を確保し、根が酸素を吸収しやすくなる▽土が混ざることによって雑草が生えにくくなる▽発生したばかりで根がまだ浅い雑草を浮かび上がらせ枯死させる▽透水性がよくなり、水分や肥料を地中に染み込ませやすくなるーなど幅広い効果があります。
ただし、作業する際の注意点は、根の近くまでくわなどを入れますから、根を傷つけないように浅く耕すこと。また、カラカラに乾いた状態の土より、雨が降った翌日など、表土に湿り気があった方が、草も根から取れやすく、作物の根を切ることも少なくなります。追肥が必要な際は、肥料が直接根に当ることで根を傷めないよう、よく土と肥料を混ぜ合わせてから行います。
土寄せには、地表面に近い根の乾燥を防ぐ▽ブロッコリーなどの株元に土寄せすることで、風で作物が倒れるのを防ぐ▽根菜類では、日光でジャガイモが緑色になるのを防ぐ、ショウガの肥大促進、サトイモの収量アップなど▽土壌の通気性をよくし、ネギでは光をさえぎり軟白部を作るーなどたくさんの効果があります。
作業するときは、作物の株元まで土を寄せてかけ、なるべく葉にかからないようにすること。ハクサイやキャベツ、ブロッコリーでは、雨や風で土が流れて作物の根が出てしまったり、成長した作物が株元から倒れたりすることがあります。この状態では作物の質が悪くなってしまうので、根をしっかり張らせると同時に根の露出を防がねばなりません。
しっかり巻き上がったハクサイや、わき芽がたくさん採れるブロッコリーを収穫するには、根に酸素を与える中耕、土寄せ、追肥はとても重要な作業です。
面積が広いプロの生産者は専用の中耕除草機などを使って条間を押しますが、直売所の方なら人力中耕器、家庭菜園なら三角ホーなどを使って丁寧に土を耕してください。
日中と夜間の気温格差と、中耕で根に新鮮な酸素を供給することで、一段と野菜のうまみが増します。自然から得る栄養とエネルギーをいただきましょう。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)
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