伊都キャンパス西側に「科学の村」
九州大学伊都キャンパスの西側に、市民や大学、企業の関係者が職住余暇一体で、心豊かに暮らしていける「科学の村」づくりが実現に向け、いよいよ本格的に動き出した。糸島サイエンス・ヴィレッジ(SVI)まちづくり構想が完成し、糸島市は11月21日、構想の概要を発表。複数の民間企業が資金を出し合い、学生街などの居住施設をはじめ、研究施設、教育施設などの事業化に向けた方針が明らかにされ、市は土地利用に関する法的手続きなどで、SVIのまちづくりを支援する考えを表明した。
記者会見を行った月形祐二市長は「豊かな自然と歴史に加え、九州大学の存在が本市の強み。九州大学の知を生かした学術研究都市づくりは、さらなる糸島の魅力になる」と述べ、SVI実現への期待を語った。
SVIは、同市の長期総合計画の重点課題の一つ。同市と九大、民間企業、金融機関が2021年10月、一般社団法人SVI推進協議会(代表理事・馬場貢副市長)を設立。同協議会の担当理事と事務局が構想づくりを行い、九大や市の関係部署の意見を踏まえた上で、同協議会が最終的に構想をまとめて決定した。
構想の想定地は、同市志摩馬場の20~30ヘクタール。山林が5~6割を占め、ほかは農地や雑種地。市有地が3ヘクタール含まれるが、大半は私有地という。
構想が目指すのは「『まちづくりを研究・実装するための』まちをつくる」。民間のスピードと資金により、1万4千人超の学生がいる伊都キャンパスそばに充実した仕事や研究、生活ができる環境を整えたまちをゼロからつくるとしている。
実験的な取り組みが「新しい公共性」の確立。デジタル技術を活用し、これまで自治体が行ってきたサービスを、民間と行政が連携して提供し、より良い暮らし方ができるようする。また、農業や漁業、観光の従事者と共同研究をするなどして交流し、市全域にSVIの効果を広げるとしている。地方創生時代を見据えた取り組みによって「糸島まちづくりモデル」をつくり出し、国内外に波及させていくという。
まちづくりは、直径200メートルのユニット単位で行い、これを想定地内に複数連ねるという。最初に取り掛かるユニットは学生街で、ほかには学校や国際、ホテル、農業実験などさまざまなユニットを想定。ユニットを事業化するのは、民間企業が複数集まって組織するコンソーシアム。専門分野ごとに集結し、計画づくりや事業構築を行う。今回の構想決定を受け、今後は新たなまちづくり会社や、国内外からの投資などによる開発投資組合の設立を進める。着工時期は未定。
記者会見では、構想策定に携わった同協議会の平野友康理事が「これからの計画づくりには、さまざまな人材に参加してもらい、地方創生の最高のモデルをつくりたい」、馬場代表理事は「糸島市全体が研究フィールドであり、まちづくりの課題を解決していくための新サービスや新商品をつくっていくことになる。市民にもご協力をいただきたい」と語った。