プロの土づくり
秋に種をまいたダイコンやカブ、ニンジンなどの根物野菜や、苗を植えつけたキャベツ、ブロッコリー、ハクサイの収穫時期を迎えました。
ベテラン家庭菜園者のおじちゃんから「ハクサイが大きゅう育ったばってん、なんかフワーっとして、締まっとらん」と相談を受け、「今から寒~くなるけん、締まりますよ」って答えました。
今年の晩秋は気温が高かったため、ふっくらと柔らかく育っているようです。今後は、日中と朝晩の気温差があるほど、がっちりとした締まった巻きの強いハクサイとなっていくでしょう。皆さんのハクサイやダイコンなどの秋冬野菜の育ちはいかがですか。
いろんな野菜の収穫時期を迎えている中、実はプロの生産者は、次の栽培準備に入っています。その一つ。糸島はキュウリの栽培が盛んで県内1位の収穫量を誇っています。
ハウス栽培で12月まで収穫した後、茎や葉を片付け、2月上旬に苗を植え込む準備をし、6月まで収穫します。後半の収穫をしつつ、次の植え込みの準備をするのに重要なのが、土壌分析による診断と結果に基づく施肥設計と技術の共有。各生産者は個別でJAの技術担当や私たちとヒヤリングを行い、苗定植前に堆肥や石灰などの土壌改良材や基肥の種類や施用量の処方を行います。
例えば、土壌酸性度(pH値)や肥料の残り具合(EC値)は特に重要で、測定結果によってかなりのことが判断できます。
人間の健康診断に例えると、pHは「体温」。ECは「血圧」に相当し、いずれも重要な診断項目です。表を参照ください。A氏の栽培地はpHが極端に低く、EC値が極めて高い数値を示しています。つまり、土壌酸度が低いため、肥料を吸収する力が弱く、養分が蓄積してしまっている状態です。人間に置き換えると、低体温になり、体のバランスが崩れ、高血圧症になってしまっている状態です。
B氏の栽培地はpH、EC値どちらも適正状態でバランスよい土壌といえます。その他、チッソ、リン酸、カリウム、カルシウムなどの作物の重要素の土壌含有を調べ、細かく分析し、必要な養分の肥料を施用する設計を行います。
土壌診断によって、生育に必要な栄養素の過不足を判断することで、生産者は過剰な場合、余分な肥料を与えなくてよいので、生産コストの軽減につながるし、不足であれば必要な量だけ施肥することで無駄のない栽培が可能です。
先人は、鋭い観察力と感覚で適正な肥料を与え、健全に育てていましたが、現代は、気候の変動や施設栽培での連作などで環境が変わり、土壌分析の指標は特に重要となっています。
今、糸島産の野菜は各地で人気があるようです。生産者はしっかり自分の土壌を見極め、高品質、収量増確保などに日々努力しています。ぜひ、糸島産野菜の味を楽しんでください。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)
※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。