繕いながら後世へ伝える
糸島市志摩の櫻井大神宮で、茅葺(かやぶ)き屋根の葺き替え工事と社殿の大規模保存修理が行われている。
同神宮は、櫻井神社そばの杉木立ちの中に建ち、1625年に黒田藩により創建。来年にはご鎮座から400年という節目を迎える。伊勢神宮にならい、20年ごとに式年遷宮を行ってきたが13回目にして止まり、現社殿は158年を経る。今年1月に始まった修復作業では、本殿・幣殿(へいでん)の屋根は「総葺(ふ)き替え」し、拝殿は傷んだ部分を新しい茅(かや)に入れ替える「差し替え」を行う。三つの社殿とも部分解体し、ゆがみやねじれを修復、傷んだ部分を交換する。
古い茅をすっかり取り除き、屋根組があらわになった本殿の作業場では、茅を並べて縄で固定する作業が行われ、「キュッキュ」と縄を縛る軽快な音が響いた。
伝統建築の修復を専門とし、設計監理を担当する中島孝行アトリエ一級建築士事務所の中島孝行さんは「文化財として後世に残す建築物は、できるだけ建設当初から使われている材を残し、傷んだところのみを取り替える矧(はぎ)木・継木などの手法で修復する」と説明。「後世の人がいつ取り換えたかが分かるように」と繕った部分に焼き印や筆で年号を細かく記録する。屋根組に偶然見つかった「雷山村興平」の文字に「近在で屋根ふきのうまい人だったのだろうか」とその時代に思いをはせた。
外山貴寛禰宜(ねぎ)は「神社を守るだけではなく、150年経つ歴史的価値の高い社殿を、後世に引き継ぐという使命も加わり、身の引き締まる思い」と話した。
工期は6月末頃まで(進捗(ちょく)により変化)。同神社では修復作業へのご奉賛を募集する。一口2千円より。