早植え禁止&順化
そろそろ春の苗物シーズン。JAや園芸店、ホームセンターさんなど、特設コーナーをつくり、本格的な販売が始まっています。
ただ、野菜作りアドバイザーとしては、少々気になることが。というのも、最近は「早く植えれば早くできる」と考える初心者の方が多いため、そのニーズに応えようとして販売が早すぎるきらいがあるのです。早植えは失敗のもと。低温障害で失敗することがあるからです。
真夏の30度を超える温度にも耐える春夏野菜ですが、寒さにはそう強くありません。4月にナスの苗を植え、10度を割る気温に遭うと、葉は縮んで根は弱り、生育がどんどん遅れてしまいます。
だから、ナスの植え付けの適期は、晩霜の危険がなくなり、地温15度が確保できる5月上旬の植付けがベスト。この時期に植えたナスの方が、安定して生育し、立派に育ちます。これはピーマンも同様です。
オクラもそう。高温生育野菜ですから、種をまいた後に低温に遭うと発芽しなかったり、発芽してもその後枯れてしまったりします。
確かに、まだ寒さ本番中の2月に種をまいて、ポッカポカの暖房をきかせたハウスで育ってきたわけですから、いくら4月といえども、外気温は低く、特に晴れた夜は放射冷却で、さらにぐっと冷えます。野菜もたまったものではありませんね。
とはいえ、早めに苗を植えたい皆さんの気持ちもよくわかります。
そこでお薦めするのが、順化管理。一般的に販売されている野菜苗は、生育適温を維持したビニールハウスなどの温室で大切に育てられています。つまり、暖かいところで育った苗を、いきなり夜も冷える寒いところに植えたら、びっくりしてしまうわけです。野菜苗を購入されたら、いきなり畑に植えずに、寒さに当たらない明るい場所、例えば日の当たる縁側とか玄関とかに置き、水やりを控えめにしながら3~5日慣らしてから植えます。
ただし、暗いところは、光を求めて苗が徒長するので駄目。明るいところに置くのがポイントです。
「苗半作」。良質な苗を植えることで、一生の生育の半分は決まったも同然との意味です。私たちも野菜に負けないよう、しっかり成長したいものです。
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40年余りにわたりお世話になったJA糸島を退職し、4月からトータルアグリビジネス企業「シンジェンタジャパン」のアグロエコシステムテクニカルマネジャー(福岡支店駐在)として九州各地で営農技術指導を行うことになりました。引き続き、みなさまに健康な作物づくり、庭木の手入れなど、役立つ情報をお伝えしていきますので、よろしくお願いいたします。 (古藤俊二)
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