【糸島市】ドクター古藤の園芸塾Vol.72(5/20号掲載)

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新緑のケムシにご用心

 ゴールデンウイークも過ぎ、少し汗ばむ季節となりました。山々に目を向けてみると、もりもりとした、新緑が目に飛び込んできますね。ついこの間まで、モミジやサクラなどの落葉樹は、幹や枝だけだったような気がしますが、植物の生きるための、生命維持管理能力には、あらためて感心させられます。

 そんな新緑が美しい時に、毎年必ずといって、よく相談を受けることがあります。「今年のサクラはなご~花の咲いとったけん、花見ばしてにぎわったたいね」

 「サクラの散ったあと、美しか、青々した新緑の出とったけん、近づいて葉ば見よったら、大きな穴の開いとったとですたい」

 「よ~と見よったら、たまがった~。黒~かケムシの葉ばバリバリ食べてしまいよったですばい」と驚いて話されていました。

 私も「よ~刺されんで、よかったですな~」とお答えし、「それはケムシの仲間ですな」と伝えました。

 本来、サクラは多くの虫が利用します。蜜や花粉を集めたり食べたり、樹液を食べたり、棲み家にしたりとさまざまな形で利用します。そのなかで、葉を食することで、外観を悪くし、樹勢を弱めるなどの被害をもたらすのがケムシの仲間(ガの幼虫)です。ドクガとかモンシロドクガオビカレハなどがサクラの葉を食べる代表的な害虫で、毒を持つものや、無いタイプなどが見受けられます=写真1。


写真1

 ※注意:幼虫は成長段階によって毛の生え方や色合いが変化しますので、掲載の写真とは違う場合があります。やわらかく緑色のサクラの葉はケムシの大好物です。

 落葉樹でもあるサクラの葉は、ツヤツヤとした固い葉をもつ常緑樹と異なり柔らかい特徴をもっています。小さいケムシでも食べやすいようなしなやかさと、たくさんの葉をつける特徴がケムシに好まれてしまっているのでしょう。実はケムシは春だけに発生するわけではありません。春の新緑の時期が過ぎてしまえばケムシの対処をしなくてもよい、ということではないのです。

 ケムシの成虫は春から秋まで繁殖を繰り返し、卵は1週間ほどで孵(ふ)化して幼虫になるという非常に短いスパンで成長していく生態をもっています。そのため、春の時期を過ぎても繁殖を行い、秋の時期まで発生することがあるのです。

 春から秋の暖かい季節のうちに3回~4回ほど卵を産むのがケムシの成虫の特徴です。シーズン中に1回だけ、ケムシの対処をすれば良いというわけではありませんので注意しましょう。サクラ以外にもケムシがつく樹木はありますので、春から秋の時期にかけては害虫対策がかかせないのです。

 そこで、対処法は

 一番簡単な方法が枝ごと切り取って廃棄する方法です。サクラはあまり剪定(せんてい)に向かない樹木ではありますが、ケムシをそのままにしている方が、被害が広がってしまいます。また、ケムシが1匹しかいないように見える枝でも見えない葉の裏などについている可能性はありますので思い切って切ってしまった方が良いのです。

 薬剤処方は2通り

 シャープな効き目は「トレボン乳剤」4000倍希釈液、または環境に配慮した「STゼンターリ顆粒水和剤」1000倍希釈液の散布がよろしいでしょう=写真2。薬剤の詳しいご使用方法は、販売店へご相談くださいませ。

写真2

 新緑は、日々酷使している疲れた私たちの目をリフレッシュしてくれます。しかし、多様な生き物も生息していますので、気を付けながら楽しんでください。

(シンジェンタジャパン・アグロエコシステムテクニカルマネジャー 古藤俊二)

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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