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「お客さまと従業員の命が大事」 二丈の初潮旅館、先駆け休業

2020.04.12

「今できることをやるしかない」と、玄関に貼った臨時休業のお知らせに目をやるおかみの宇治川さん

「劇団神楽」の無観客公演の撮影収録を見守る宇治川さん(手前左)=3日

 新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため7日夕、福岡を含む7都府県に出された「緊急事態宣言」。「お客さまの命も従業員の命も大事」と、糸島市二丈鹿家の「初潮旅館」はその6日前の1日から、自主的な臨時休業に入っている。おかみの宇治川由美さん(45)は「(不要不急の外出以外の)人が動いている限り、コロナの終息は難しいのでは。リスクを少しでも減らす協力になれば」と話す。

 同旅館は1956年創業。各部屋から面前に広がる玄界灘や海に沈む夕日を眺められるのが売りで、熱烈なファンが多い。館内に大衆演劇の劇場を備え、1年に計8カ月間の公演があり、全国各地から各劇団のごひいきさんが泊まりに来る。利用客の約8割は高齢者で、コロナに感染すると重篤化する危険性がある。

 感染防止策は早い時期から取り組んできた。マスクでの対応、利用された箇所をその都度消毒、マイクロバスでの送迎途中に寄っていたトイレ休憩を省くよう宿泊客に協力を求めるなど、「営業を続けるのを前提に、何ができるか思案してきた」とおかみ。だが、国内での感染拡大のスピードや、3月の3連休や月末の土日に、若者を中心とした人の流れが二丈の姉子の浜や志摩の海岸沿いに押し寄せる流れを見聞きし、「これは近いうちに、糸島できっと感染者が出る」と確信したそうだ。

 コロナ禍が連日トップニュースを占める状況下でも、首都圏などから問い合わせもある。おかみは言う。「遠方から来てくださるのはありがたい。でも、飛行機や新幹線などを使うことで高まる感染リスクを想像すると、正直怖い。万一、うちの旅館が感染元になってお客さまにうつしでもしたら、申し訳ないでは済まない。従業員たちが、感染の恐怖も感じて仕事をしているのを知っている。何が大事って、命が大事と」。

 一方で、1月から6月までのロングラン公演中だった「劇団神楽」(4人)の舞台。主催者として安全第一を考え、3月1日から半月間の休演を決断した。福岡の状況は好転せず、休演を半月ずつ延期。宇治川おかみは「お仕事をさせてあげられないことへの申し訳なさも強い」と吐露する。

 そこで思いついたのが、観客を入れない舞踊ショーの動画を撮影し、ネットによる無料配信。ダイジェスト版の第1弾を3月下旬、第2弾を今月初旬に、動画投稿サイトへ上げた。

 同劇団の神野泰志座長(41)は「こんな時だからこそ、初潮さんに来れず観賞できないファンの方々や、家にこもりっきりの人たちにサービスしたい。僕たちの踊る姿や楽屋での素顔、鹿家の最高の海の映像を見て、気晴らしになれば」と語った。

 緊急事態宣言が出され福岡県が対象地域になったことが意味するのは、糸島が感染の不安がない「平時」に戻るまで、先の見えないトンネルに入ったということ。宣言が出る前の今月3日、宇治川おかみは取材の中でこのフレーズを3度、口にした。「今できることを、やるしかない」。

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