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多文化共生がテーマ 人権教育の手引き作成
2022.06.17

糸島市に住む外国人が増える中、市教育委員会は、異なる文化や価値観を持つ人々が共に暮らす「多文化共生」について、子どもたちに教える小中学校の教員向けに、授業づくりに役立つ手引書を作成した=写真。市教委は「多文化共生をテーマにした手引書は、県内でもほかにない」としている。
手引書のタイトルは「多様な文化を理解し、ともに生きるために」。2015年の「がいじ発言への対応と指導」、18年の「ネットトラブルに対応できる人間関係づくりをめざして」と同年の「多様な性を理解し、ともに生きるために」に続く、「人権教育の手引き」シリーズの第4弾。
手引書は3部構成。第Ⅰ部では、市在住の外国人が15年の665人から19年には1248人と倍増し、市の全人口の約1%を占めている現状を説明。
「いま私たちの目の前にいる子どもたちの中に外国とつながりを持つ子どもがいるという現実と、外国人に対する差別や偏見を払しょくし、お互いの文化の違いや多様性を尊重する取り組みを行う必然性がある」と課題を挙げ、糸島市を「誰もが住みたいまち、住み続けたいまち」とするには、「人種や民族に関わらず全ての子どもの自己実現が図られるような、発達段階に応じた小学生低学年からの系統立てた取り組みが必要」としている。
第Ⅱ部では、アフガニスタンなどで人道支援に尽力した福岡県出身の故中村哲さんの生き方や行動から、国際理解について考える「医師が用水路を掘る」など、小学校低学年4本、同中学年5本、同高学年3本、中学校3本の指導案を掲載。人権教育を実施する際の大切なポイントや、教員が授業づくりをする際の具体的な活用の仕方、指導に当たって配慮する点などを網羅している。
第Ⅲ部の学習資料では、糸島市のシンガー・ソングライターmonさんらから聞き取った内容を、学習素材として載せている。
手引書は、市内の小中学校教員や市教委らで構成する委員会が作成した。市教委は、今年度は手引書を使って研修を重ね、来年度は「多文化共生の授業を指導計画の中に組み込む」としている。制作委員会の事務局担当校長を務めた東風小の重冨泰敏校長は「若い教員の人権意識や人権感覚の育成が大きなテーマとなっている。人権教育を実践する際の課題克服や、人権教育の充実に向けて、手引きを有効に活用したい」と話していた。