【糸島】ドクター古藤の園芸塾Vol.28(6/16号掲載)

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病害対策に食酢を活用

 梅雨の真っただ中、先週に引き続き、作物の病害対策を取り上げます。私たちの生活でも、洗濯物がカビ臭くなったり、窓の結露する辺りに黒いカビが発生したり、高い湿度に加え、空気が動きにくく、適温になるといろんな菌の活動が高まります。


 それは、キュウリやトマト、ナスなどの露地栽培の作物も一緒。「せっかく小さな実の付いたキュウリに、ネズミ色のカビのふいとる」「葉が黄色になって、よわよわしか~」「ペチュニアの花が少なくなったけん、株元みたら、びっしりネズミ色のカビのはえとうやなかねん」。この時期、こうした相談をよく受けます。
 それでは、病害から作物を守るためにどうしたらよいのでしょう。


 まず、ネズミ色のカビが発生しているのは、いろんな作物に見られる灰色カビ病の発生によるものと推測します。また、葉が黄色くなっているのは、特にキュウリに発生しやすいべと病の可能性と考えられます。キュウリの灰色カビ病の場合、咲き終わってしぼんだ花の部分から発生し、小さい実に進展し、実が腐れていきます

キュウリの実の灰色カビ発生初期


 ズッキーニやゴーヤも同様な症状に陥ります。20度前後の気温で多湿。さらに朝夕の急激な冷え込みも病害を促進させます。


 キュウリのべと病は葉の表面が黄褐色から灰褐色になり、裏面は薄くネズミ色のカビが生えています。湿気を帯びていると葉がベトベトになり、乾燥するとガサガサになりもろくなり、下葉が全部枯れ、先端の新葉だけ残ります。空気中を浮遊し、風などで葉に到達し、気孔などから侵入。葉の組織内にひろがり発病します。

キュウリのべと病発生初期


 灰色カビ同様、6~7月に発生が多く、特にべと病は肥料切れを起こすと、発生が増える傾向にあります。また、病原菌が土と一緒に下葉に跳ね上がるのも発生要因となりますので、株元は、敷ワラなどで防ぐ必要があります。
 それでは対策方法は。


 ①まずは、通気性の確保。茎葉が茂り込むと、空気が滞留しやすく、カビの発生要因が整います。キュウリの場合、先端部がある一定の高さ(概ね1メートル前後)に伸びたら、地際から約30センチの高さまでの葉や側枝は全部取り除き、主枝だけとしたスッキリした状態にして通気を確保してください。草花のペチュニアは、株元の中心部が葉も少なく灰色カビなどで薄くなっていきます。株元から20センチ前後の箇所から、思い切ってバッサリと切り戻しを行い、蒸れから解放し、通気の確保をしてあげましょう。

キュウリの株元から高さ、30㌢の高さまでは、葉や茎を取り除きスッキリさせる


 ②有機的防除として今回は「食酢」の活用。先週の重曹と同様、農林水産省、環境省から、安全な「特定防除資材」として認められており、一定の病害予防効果を持っています。


 酢酸を含む有機酸が、食べ物を腐れにくくする食酢の殺菌能力はよく知られているところ。強い浸透力で植物の組織内にいる病原菌に酸の力で働きかけ、病気拡大を防ぐ効果が発揮されると考えられています。


 植物体内の窒素代謝を高める働きもあり、梅雨期のような日照不足の時など光合成ができなくなると、植物体内に窒素がたまりやすくなります。植物の健康な葉は弱酸性ですが、窒素過多になるとアルカリ性に傾きます。酢を散布すると、葉の表面のPhが酸性に傾き、植物体内の窒素分解が促され糖度も増加。病気に対する抵抗力をえることができます。


 使い方は市販の食酢を100倍に薄め、スプレーや噴霧器に入れて適宜葉面散布するだけ。簡単でしょ。専門薬のように高い防除効果は得ることができませんが、先週の重曹も食酢も身近にあり、体や環境を意識したとても優しい防除資材と言えます。

食酢の散布は、葉から流れ出るよう散布する方が良い


 梅雨の長雨だけでなく、近年は猛暑、豪雨なども起き、天候の先読みが難しくなっています。いろんなストレスに負けない、高い免疫力を持つ作物栽培に、一緒に取り組んでいきましょう。来週は、ナスの病害対策を紹介します。
 (JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)   

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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