神在西
「あなたの釣った魚を買い取ります」-昨年12月に糸島市神在西にオープンした「糸島ごはん屋BARキッチンジョーズ」は、釣り人が持ち込んだ魚を美味しい一皿にして提供する新スタイルの居酒屋だ。
4年前から本格的に釣りを始めたオーナーの釘本康光さん(34)が、自分で釣った思い入れのある魚をお客さんに出して喜ばれたのがきっかけで、釣り人、店、釣り船の三つに良い影響をもたらす「三方よし」となる船宿の仕組みに目を付けた。
加布里、岐志漁港から前原インターへ向かう道路沿いに店を構え、釣り帰りの客から、あらかじめ設定したキロ単価で魚を仕入れる。店舗裏には大型の魚をさばくためのシンクを備え、釣り人が自由に使えるようにした。先日来店した客は「明日食べにくるよ」と体長100センチに及ぶ11キロのブリを持ち込んだ。
以前は寿司屋だった店舗は、掘りごたつ席や団体利用にも対応できる座敷も備える。おひとり様でも楽しめるようバーカウンターも設けた。
肉、野菜と地元食材をふんだんに使うメニューには「おいしいと思うものにジャンルは関係ないです」と和洋中、多国籍料理が並ぶ。炊き立てを提供する土鍋炊きご飯は、生まれ育った地元福吉の棚田米で、ふたを取るとふんわりと湯気が立ち上り、つんと角が立ったお米が顔を出す。
大トリをかざるスイーツにも手を抜かない。アイスと甘夏を載せたチーズケーキにメレンゲクッキーをランダムに散りばめるなど…カフェ顔負けのデザートも週替わりで手作りする。
高校卒業後上京し、調理の専門学校へ通い、さまざまなジャンルのお店で料理修業をする中で、それぞれの料理人が食材に向き合う姿を学んできた。「食材あっての料理。生産者、作る人、食べる人、その関係性を大事にしていきたい」と思う。
あの人が作った食材を心を込めて本日の一品に仕上げる。「観光客はもちろんのこと、糸島の人が糸島産の食材を鼻高々で食せるような店にしたい」と釘本さんは目を輝かせる。