ドクター古藤の園芸塾Vol.57【1/19号掲載】

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サトイモ栽培での注意点

 暑い夏を越えて晩秋に収穫し、春に種芋を植え付ける「サトイモ」。見た目は美しかったのですが、煮っ転がしにして食べたら硬くてがっかりした、なんて経験はありませんか。

 つい先日も常連の方が私のもとに、「うちで獲れたサトイモのまずかったいね。ガジーガジーして、硬うしてとても食べれんとですばい」と袋いっぱいのサトイモを持ってきました。

 なかにはひび割れたのもありましたが、見た目は、立派。「ぜーんぶ、おいしゅうなかとですか」と尋ねると「ぜーんぶですたい」。独特の粘りや、ホクホクとした食感がたまらないサトイモなのに、なぜ、こうなったのか。

 サトイモの生まれ故郷は東南アジア。日照量が多い▽高温多湿▽肥料濃度が少ない土▽水もちが良い粘土質-などの条件下で育つ作物です。よって栽培する際は①霜に弱いため、早植えをしない②夏季の乾燥は特に嫌う③肥料を入れすぎないようにしないといけないーといった注意が必要。

 子芋が親芋に着生している付近から透明化する「水晶症状」が、子芋の着生数の多い「石川早生」などの品種にはよくあります。この部分にはデンプンがほとんど含まれておらず、食感と風味が損なわれています。

サトイモの水晶症状

 加熱調理しても硬いままなので、食用に適さないのですが、何分、皮の下の世界の話なので、外観からではわかりません。水晶症状は、梅雨明け後に晴天が続き、強い干ばつに遭った時に起こりますし、チッソ成分肥料の過剰と石灰成分欠乏による生理障害でも発生します。

 対策はありきたりですが、糸島よか堆肥くんのような植物繊維豊富な腐植堆肥の積極的な投入と深耕を長期間続けることにより、水もちが良くて粘り気のあるような土にしていくしかありませんね。

 施肥の基準は、1坪当たり、糸島よか堆肥くん7キロ、糸島かき殻石灰「シーライム」500グラム、芋専用肥料350グラムをよく土に混ぜ合わせてください。

 芋のひび割れは、芋の肥大期に発生した土壌水分の不足が原因でしょう。昨年もそうだったように、近年、7月梅雨明けから10月、高温、乾燥の長期化が常態化しています。

 土壌水分が不足すると、葉が大きいサトイモは、葉からの蒸散量が特に多いため、肥大期にくびれたように変形したり、ひどい場合はひび割れにとどまらず、亀裂が走ったりすることもあります。こちらの対策は、土壌水分を一定に保つような灌水を行ったり、土壌が保湿できるように表面にワラなどを敷いたりして乾燥対策に努めます

ひび割れたサトイモ

 糸島では、サトイモの植え込みの時期は、3月のお彼岸頃から。おいしいサトイモを育てるため、植え込み時期から逆算して、土作りを行いましょう。

立派に生育中

(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二

※糸島新聞紙面で、最新の連載記事を掲載しています。

古藤 俊二さん
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この記事を書いた人

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