コラム まち角

まち角アイキャッチ

 今年のNHKの大河ドラマ「光る君へ」。戦国時代や明治維新など激動の時代の人間模様を描くイメージがある大河ドラマだが、今回は貴族による摂関政治全盛の平安中期が舞台。主人公は、源氏物語の作者の紫式部だ。ただ、みやびやかな貴族社会も、その裏では激しい権力抗争を繰り返す。幼い頃の紫式部がいきなり母親を失うという、初回での衝撃的な物語の展開が、貴族の荒々しい一面をのぞかせる▼紫式部は、一条天皇の中宮(正室)、彰子に女官として仕えた。彰子は、政権トップの座にあった藤原道長の長女。当時の貴族は、天皇のもとに娘を入内(じゅだい)させ、後に天皇となる子が生まれることで権力を強めた。道長は、一条天皇が彰子のもとに足しげく通うようになるよう抜け目なく手を打った。一条天皇が源氏物語を熱烈に読んでいるのを知り、紫式部を彰子のもとに出仕させた▼紫式部は、中流貴族で漢学者だった父親のもとで育った。ただ、父親は官職に長くつけない時期があり、貧しい暮らしを強いられていた。荒廃した家で暮らす口惜しさのはけ口として、紫式部は家にある歌書や物語を読みふけったという▼紫式部を演じるのは吉高由里子さん。不思議な縁だが、吉高さんはNHKのドラマ「風よあらしよ」で、昨年没後100年の節目だった女性解放運動家で文筆家の伊藤野枝を演じている。今宿出身の野枝も、実家は貧しく、いつか周りを見返してやりたいとの思いもあったのだろう。読書に熱中した▼文才を磨き、筆一本で、時代を超え、多くの人の心をとらえる紫式部と野枝。吉高さんは、この2人を演じることによって多くのものを得ているであろう。俳優として2人に抱く思いを、ぜひ語ってもらいたい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

目次