コラム まち角

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 400年に渡り受け継がれてきた能登半島の里山の原風景にも、最大震度7を観測した地震は大きな爪痕を残した。西日本新聞が1月29日付朝刊で伝えた石川県輪島市の「白米(しろよね)千枚田」の惨状。日本海に面した急傾斜に広がる棚田として知られるが、無数の亀裂が走り、落石が発生し、現状では、水を張ることができないという▼能登半島は13年前、国内ではいち早く国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に選定された。白米千枚田をはじめとした農村の美しい景観に、「揚げ浜式」と呼ばれる製塩法などの伝統技術、特有の農産物、風習が継承されており、国際的な財産として認められた▼9年前には、北陸新幹線が金沢に延伸し、外国人観光客が増加する効果を生んだ。それをさらに生かし、世界に誇れるさまざまなストーリーを持つ観光地として能登半島の振興策が進められてきた。その最中での大打撃だった▼能登半島は人と自然の共生により沿岸地域の環境が守られてきた里海も広がる。その暮らしの場も、最大で4メートル高くなった地盤の隆起によって変わり果てた。港は干上がってしまい、海底の岩礁があらわになり、漁船が横たわる。防潮堤は貝をびっしりと張り付けた巨大な壁面と化し、海岸線は沖へと移動した。現地から報道される港の状況はあまりにも衝撃的だ。漁業再開の見通しがどうにか立ってほしいと心の底から願い、ただただ、祈る▼地球の営みともいえる自然は、決して豊かな恵みを与えてくれるだけではない。地球にとって、地震は星としての営みの一つ。だが、この星で生きるものにとって、あまりにも不条理な災害をもたらす。こうした自然の中で生きているという現実。「恩恵と災い」という自然の二面性をしっかりと受け止め、災害への備えをしたい。

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