連作障害のメカニズム
このところミネラルや腐植など土作りの話をしています。適期に適量の肥料や石灰などを入れて土作りし、トマトやナスの苗を植えつけ、順調に育っていた野菜。ところが、ある日突然、茎葉が赤くなり、全体が枯れてしまった、なんてことがままあります。あるいは、バレイショの肌にカサカサしたカサブタができて見かけが悪くなったり、立派に育ちながら収穫間近に突然なえてしまったカブや白菜を引き抜くと、根が奇形したり、コブができたりしていた…。
こうした場合、疑わしいのが、同じ農場で同じ種類の作物を作り続けることにより起きる「連作障害」(忌地現象)です。
メカニズムはこうです。特定の作物の連作を続けると、その根や残さを好む病原菌の増殖と、この作物の根の周りをすみかとする微生物ばかりが増えます。その結果、微生物の種類が単純化。微生物の集団に、抵抗勢力がいなくなることで病原菌に対する抑止力が弱まり、病害を助長する原因になるわけです。
例えば、畑作地帯に多いインゲン根腐病。その名の通り、インゲン豆を連作した土壌では、微生物のえさの量が減少し、微生物活性が低下することが、その発生を助長すると考えられています。
テレビで見渡すばかりの畑に、ブロッコリーやキャベツなどが、ずらっと並ぶ大産地を見られたことはありませんか。一見、大規模化で効率よさそうに見えるのですが、一方で、作付け作物の種類が単純化することで、特定作物の連作や過作を招き、連作障害の発生を増加させる原因にもなっています。
ほかにもジャガイモそうか病やアズキ落葉病、トマトやナスの青枯病などがその代表例。もちろん家庭菜園でも起こりえます。
では、毎年作付けしている水稲には、なぜ連作障害が発生しないのでしょうか。
水田の場合、水をたたえている「湛水期」と、水を落としている「落水期」がありますよね。これによって土壌の環境が大きく変化するため、土壌中の養分や微生物が、偏ったままとなることがありません。もともと土壌病害菌は糸状菌(カビ)が多く、水中の酸素のない状態では、カビは生存できないことも、理由の一つに挙げられます。
水田には土壌の自己浄化能力があるから、感心させられます。
一方、家庭菜園などでは、限られたスペースで多品目栽培となるので、知らず知らずどうしても連作状態に陥ります。土壌の中に生育を邪魔する悪玉病原菌や作物の根から分泌される老廃物などが蓄積し、根を傷めるのが起因となり連作障害の発生率が高くなってしまいます。では、どうしたら軽減できるのか。次回は、もう少し、連作障害について掘り下げます。
(JA糸島経済部部長補佐、アグリマネージャー 古藤俊二)
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