てっちゃん(松尾さん)に聞く
JR筑肥線に全国で1両しか残っていない「検測車」が走っているのをご存知ですか。運行は2、3カ月に1回程度。この珍しい列車を撮影した鉄道ファンの高校生が、日々の安全運行を支える、あまり知られていない検測車の役割を教えてくれた。
高校生は糸島市在住の松尾壮一郎さんで2年生。「福吉の踏切近くで撮影した上りの検測車です。逆光で顔の一部が影になってしまって。下りは順光だったのに間に合わなかった」。黒々とした艶(つや)のある車両の正面写真を見せながら悔しそうな表情を見せた。
検測車は、鉄道設備の消耗状況や走行に支障があるものがないかを調べる車両。「この検測車は『マヤ34型』といって、全国で生き残った最後の1両。自力走行はできず、両端にディーゼル機関車がついているんです」。
写真の細部を指さしながら、説明は続く。「筑肥線は市営地下鉄と相互乗り入れをするため直流で作られていますが、一部交流の区間があり、また伊万里-山本間は非電化のままという複雑なシステム。全線を検測するには電気を使わない気動車であるディーゼル車が必要なんです」。ちなみに、車両に付けられている「マヤ」には意味があり、「マ」は積載重量が42・5~47・5トンであることを示し、「ヤ」は、業務用であることを示す。
検測車にダイヤはない。その走行場所を知るには公開されているJRの列車位置情報を使う。白枠で動く列車マークがあれば、それが通常の電車ではない「何か」を表す。回送列車かもしれないし、検測車かもしれない。レアなマヤ34を撮影するには、いつ、何が、どこを、どのペースで走るのかを推測し、スタンバイしなければならない。
「正午過ぎに上りが来ると分かったので逆光にならずに撮影できるポイントを考え、スタンバイしていたけれど、線路のカーブの度合いが若干足りず…」。
悔しい顔を見せながらも、普段何気なく見ている線路に、検測車という列車が走り、当たり前だと思っている安全で安定した運行に欠かせない存在となっていることを詳細な情報を基によどみない口調で教えてくれた。