コラム まち角

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 新型コロナウイルス感染が落ち着き、インバウンド(訪日客)が回復する中、あらためて「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)」が重要視されている。地域が持つ本来の自然環境や文化に配慮した観光地づくりを行い、住民と観光客が共に潤うことを目指す取り組みだ▼こうした考え方が生まれたのは、観光旅行の大衆化に伴い、観光地の受け入れ能力を超えた観光客が押し寄せるオーバーツーリズム(観光公害)が起きるようになったからだ。交通渋滞やごみの放置で住民生活に支障が出て、観光客も地域の魅力を十分に味わえない。こんな不満だらけの観光地が各地に存在する▼地域経済振興に主眼をおくビジネス誌「コロンブス」が2月号で、持続可能な観光地づくりに向け「コミュニティ・リゾート」をキーワードにした特集を組んだ。この言葉は、大阪市コミュニティ協会特別研究員の李有師さんが提唱し商標登録されている▼特集によると、コミュニティ・リゾートのポイントは「地域が主体となって活用する資源やコンテンツを厳選し質の高い観光体験を提供し、身の丈に合った観光経営を目指す」。その事例の一つとして、三重県鳥羽市の離島をフィールドにしたエコツアーを紹介している。地元の旅館経営者らが漁師や住民と連携し、カヤックで自然を満喫したり、海女小屋で海女と交流したりする30種類ほどのツアー商品があるという。島の子どもたちが修学旅行生のガイド役を務めるツアーもあり、子どもたちのコミュニケーション能力が向上するといった効果も▼地元では、ごくありふれた日常の風景でも、観光客には新鮮で魅力的。その良さを損なわないよう器に合った規模で、地域らしさを味わってもらう。「地域ならでは」の資源に恵まれた糸島も、きっと持続可能な観光を推進していく手本になれるだろう。

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1917(大正6)年の創刊以来、郷土の皆様とともに歩み続ける地域に密着したニュースを発信しています。

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