竹次郎 放置竹林問題に貢献
竹林を整備し、メンマの製造・販売を手がける「竹次郎」(古賀貴大代表取締役)が、メンマ用タケノコの収穫を4月23日から開始した。切り出されたタケノコはゆでて塩漬け加工される。収穫は5日頃まで続く予定。

初夏の陽気に包まれた4月24日、糸島市志摩の船越漁港にある作業場では、メンマの一次加工の短期バイトで集まった約30人のスタッフが、山から軽トラックで運び込まれるタケノコを手際よく下処理。辺りには包丁の音がリズミカルに響いた。奥では大釜が湯気を上げ、ゆで上がったタケノコは大きなたるに塩漬けにされた。
山での収穫メンバーを含めると、毎日約50人が作業に汗を流す。昨年は16日間にわたる作業で約2万5千本のタケノコを収穫。地権者から同意を得て整備する市内各地の竹林面積は、120ヘクタールに及ぶ。
一次加工の後は、同市本にある加工場に運ばれメンマへと仕上げられる。地元の「北伊醤油」に特注した醤油で炒め煮にしたものなどが、「無限めんま」として各地の店舗に並ぶほか、オンラインショップを通じて全国に届けられる。
古賀さんがメンマに着目したのは、コロナ禍の2021年。泊で営むレストランの裏手に広がる竹林の現状を目にしたことがきっかけだった。一般に食用とされるタケノコは地面から出たばかりの若いもののみだが、メンマには約2メートルまで成長した幼竹が向く。これまで利用されてこなかった資源を商品化し、手入れに困る所有者に代わって竹林を整備することで、放置竹林という全国的な課題に向き合える食品加工に結びつけた。

現在、日本で流通するメンマの99パーセントは輸入品。古賀さんは「国産メンマの製造・販売を通じて、荒れた竹林が整備され、自給率向上、地域雇用の創出、そして共同作業によるコミュニティーの強化につながったら」と思いを込める。
昨年からは、糸島で確立した仕組みを他地域へと広げる。九州では大分と沖縄を除く各県の地域と協定を結び、塩漬けまで処理されたタケノコを全量買い取る体制を整えつつある。
料理人である古賀さんは、毎朝早朝に50人分のまかないに腕を振るう。昼休憩で「今日はメンマ入りのマーボー豆腐」と舌鼓を打つのは、同市伊都の杜から参加する藤﨑文朗さん(73)。妻に勧められ昨年から関わり始め「今年1月にはすでにお声がかかった」主力メンバーで、最終日まで参加する予定。「自分たちの作業で糸島の里山がきれいになっているというのがモチベーション。その上いろんな人と知り合うことができて、共同作業を楽しんでます」と話す。
三重、大阪、栃木と全国から視察と体験の一行も訪れ、全国各地での動きも始まる。「雇用を生む、収益性のある仕組みづくりがカギ」と古賀さん。「メンマ作りからスタートして生み出した仕組みで、さまざまな社会問題へアプローチしていきたい」と未来を見据える。
(糸島新聞社ホームページに地域情報満載)